7/22(月)東京出発47日目、モンゴル18日目 バットセンゲルからトソンチェンゲル 走行距離297km

明け方、当然の如く焚き火ストーブの火は消えていて寒さで目を冷ましました。目を覚ましてしばらくすると、案の定、昨日の旦那さんがゲルにやって来て、「ger . money 」と言ってきます。
まぁある程度は覚悟していたので、いくらか聞くと、旦那さんは数字があまり良くわからないらしく、「my wife」と言います。
旦那さんに導かれてその家族が暮らすゲルに行くと、奥さんが「まぁ、座って朝ごはん食べなさいよ」と言ってイスを出してくれます。
促されるままにイスに腰掛け、パンとパンに塗る何かの乳で作ったと思われる日本では見たことの無い食材とお茶を出してくれます。
子供たちもそれを食べています。
とりあえずいただこうかと思ってパンにその謎の物体を付けて食べてみると、これがまぁ不味いのなんの(-_-;)
頑張ってパン一切れをお茶で流し込むと奥さんが味はどうか?と笑顔で尋ねてきます。
涙目で親指を立てて「good」と言うと、下の小さいお子さん二人が私の所に来て膝の上に乗ります。
鼻水垂らして汚いけど可愛いじゃないか(ノ≧▽≦)ノ

奥さんがもっとお食べと促してきますが、お腹いっぱいだと言って丁寧に辞退します。
すると奥さん、紙に金額を書いて見せてきます。
前日に調べていた日本の旅行会社が企画するゲル宿泊ツアーに比べれば安いけれど、それでもちょっと高い(-_-#)
うーむ。交渉できなくもないのでしょうが、このお金がこの子達のご飯になるのかと思うとそんないくらでもないお金を値切ってもあまり意味がないのではないかと思い、渋々払うことにしました。
野宿していれば払わないで済んだお金を払ったことがどうしてもモヤモヤしてしまいますが、サービスを受けた以上、幾らかは払わない訳にはいかないですし、あれが子供たちのご飯代になるんだと自分に言い聞かせて出発することにしました。
旅を始めて1カ月半、最近私は考えてしまいます。
私は果たして何のためにこんなことをやっているのでしょうか?
日本にいて仕事にはやりがいを感じていましたし、毎週末にキャンプに行ったりバイクに乗ったり美味しい物を食べに行ったり快適で楽しい毎日を過ごしていました。
旅に出てからはただ毎日のようにバイクに乗り、寝床の心配をして、寝ている最中も荷物やバイクの心配をして…。
ウラジオストクまでのフェリーが一緒でロシアを一緒に走った洋介さんはモンキーで世界を回るという目標を持ち、現在はオーストラリア人とカナダ人のライダーと一緒に私より先を走っています。
ジュンジさんはギターでお金を稼ぎながら世界中の人たちと触れ合いギター一本とオートバイで世界を回れるかの挑戦をしています。
大澤さんは3カ月という限られた時間の中でロシアの骨の道やモンゴルのオフロード、中央アジアの砂漠地帯からパミールハイウェイと、とにかくオフロードとひたすらキレイな景色を求めて走り続けています。
粕谷さんも定年退職を期にモンゴルの大自然と中央アジアの雄大な景色を目指して走っています。
私は???
私は何のためにここに来たのでしょうか?色々な国の色々な人たちの生活や文化に触れて、私自身の人生を見つめ直したいと思って出発したものの、何一つできていません。
今日どこで寝るのか?実は引き出していた現金がほとんど手元になく、大きな街も見つけられず、ATMでお金を引き出すことすらできていません。この辺りではガソリンスタンドでもカードが使えず、そろそろ本気で水も食料もガソリンも買えなくなってしまうという恐怖も襲って来て、心細くもなって来ているのでしょう。
昨日の反省とばかり、この日はまだ16時頃でしたが、野営出来そうな川が流れている良い場所を見つけたので、バイクを草地に乗り上げて行きました。

嬉しいことに近くにモンゴル人の家族が車で来ていてテントを張っています。
近くにテントを張って今夜ここで寝ても良いかと聞くと、あっちの木陰だったら良いよと言われます。
まだ明るい時間帯でしたがモンゴル人の家族も近くにいることだしと安心してテントを設営しました。まだ明るい時間帯ですのでついでにチェーンの掃除などバイクのメンテナンスもします。

ひと段落ついたのでコーヒーを沸かして飲もうとゆっくりしていると、近くの家族の一番小さい男の子が食べ物とお茶を持ってこちらに来ました。どうやら食べてということのようです。
気持ちが弱っていたときにその優しさが心に沁みました。「バヤララ(ありがとう)」とその男の子に言い、少し離れたところにいる家族にも大きな声で「バヤララ!」と言って手を振ります。向こうも手を振って応じてくれました。

夜中、朝に食べた謎の乳製品が悪かったのか腹痛を感じ目を覚まします。
トイレットペーパーを持ってテントの外に出ると、そこには今まで見たことも無いような満点の星空が光っていました。こんなにもたくさんの星が見えるのに、北斗七星もカシオペアもこれでもかとくっきりとはっきりと光り輝いていました。
そうだ、帰るのはいつでもできる。まだ何も見つけていないけど、まだ何もしていない。
この星空の下、テントから少し離れた位置でズボンを下ろてしゃがみ込むと、もう少しこの旅を続けてみようと思うのでした。
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