8/10(土)東京出発63日目、カザフスタン8日目、バラカシ~ウルケン 走行距離270km

アシムと洋介さんに一人になることを伝え少しセンチメンタルな気持ちになりましたが、気を取り直してこの日の目的地ウルケンに向かいます。
しかしこの区間には目ぼしい宿がなく、ウルケンから少し行った場所で野営できる場所はないかとバルハシ湖のほとりにバイクを走らせます。しかしそこはゴミだらけでお世辞にも美しいと言えるような場所ではありませんでした。湖自体は青くて美しいので残念でなりません。

せっかく野営するならきれいな場所が良いよねということでこの日は野営ではなく宿を探すことにしました。
ウルケンまで戻り、この村唯一のホテルを見つけます。しかし、シャワーも無いあまりきれいではない三人部屋であり得ないくらい高額な金額を伝えられます。さすがにそれは無いということで仕方なくハイウェイ沿いの宿を探すことにしました。

すぐ近くに宿を見つけることができ、部屋を見せてもらい金額を確認すると、ウルケンの宿の1/8程度の格安ホテルでした。
シャワーはありませんでしたがカフェも併設されていて利便性を考えれば全然問題ありません。
荷物を置いて併設されているカフェで食事をしていると一人の欧米系の女性ライダーが入ってきて「外のバイクはあなたたちの?荷物置いて来るから私も仲間に入れて!」と明るく元気な声で言ってきました。
小柄な女性だったのでどんなバイクに乗っているのかと外に出て確認してみるとBMW GS750でした。あんなに小さな体でこの中の誰よりも大きなバイクに乗る彼女は想像通りパワフルでした。
この女性はチェコ出身で名前はマルチナ。明るくて元気で素敵な女性です。私たちとは反対方向から来ていたため、これから我々が目指すパミールハイウェイをすでに通過してきたということです。
早速アシムがここから先、アルマトイまでの道路状況を聞きます。
するとマルチナは「シィット、シィット、シィット」と道路状況は最悪であったことを教えてくれます。このマルチナ、明るくて元気で素敵なのですが「ファック」とか「シィット」とか汚い言葉を連呼するところがたまにキズです。それに対してアシムの口からそのような汚い言葉を聞いたことがないことから、いかにアシムが知的できちんとした教育を受けてきたかが良くわかります。
マルチナはさらにパミールハイウェイのことについても教えてくれます。スマホで撮った写真を見せながらパミールハイウェイがいかに素敵な場所であったかを伝えてくれました。
マルチナのfacebookのアイコンをみるとサーキットでスポーツバイクを走らせる写真ですのでオートバイの経験は長そうですが、実はこの旅に出て初めてオフロードを走ったとのことです。そのためパミールハイウェイでは数えきれないくらい転倒したとのことでした。でもそんな経験も楽しそうに目を輝かせて話すのです。
私なんて西モンゴルで一回転倒しただけで半べそかいていたのに、マルチナのパワフルさには頭がさがる思いです。
でもきっと彼女も過酷なパミールハイウェイで何度も転倒してきっと泣きたいくらいつらい思いもしたと思うのです。でも彼女の姿を見ていると、おそらくそんなきつい状況になっても、「大丈夫よ。こなんのへっちゃらだわ」って言って笑い飛ばしていただろうことが容易に想像できてしまうのです。
私が今まで出会ったライダーたちは皆一様に明るくて前向きで社交的です。外国をオートバイで走ろうと思うような人はそういう性格の人が多いのか、それとも旅を続けているうちにそのような性格になるのでしょうか?
私もマルチナのように明るくて元気いっぱいの魅力溢れる人になりたいです。

何故か近くで食事をしていた仕事上がりの警察官も一緒に
アシムと洋介さんに一人になると伝えて少しセンチメンタルになり、再び一人になることに一抹の不安を抱えていましたが、マルチナに会い、たくさんの勇気をもらいました。
私はこの旅に出て自分の無力さに何度も打ちひしがれていました。何もできない自分が不甲斐なく、情けなく思っていました。
でもマルチナに会いあることを思い出しました。
私は賢くもないですし、特殊なスキルをもっているわけでもありません。それでも日本にいたときはとにかく誠実でいることと自分にできることを精一杯やるということで仕事を頑張ってきました。
能力の高くない私は誠実でいようという思いと努力だけで困難を乗り越えてきました。
私はスーパーマンにはなれません。でも誰にでもできることを頑張ってきたので困難を乗り越えることができたのです。
私もマルチナのように明るく元気でいることはできるはずです。どんな困難に出会ってもきっとマルチナがそうしていたように、強がりでもやせ我慢でも笑い飛ばせるような強さを持てるように頑張っていきたいと思うのです。
マルチナのおかげで前を向くことができました。
心からありがとう。

一人になると伝えた次の日の朝食のときの写真
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