8月24日(土)東京出発78日目、タジキスタン2日目 ムルガブ~ランガー
このパミールハイウェイの中でもムルガブにはバザールがあり、そこで買い物をすることができます。
朝9時にバザールが開くということで朝は7時に起床し朝食を済ませ、準備をしてオートバイでそのままバザールに行きます。
ここでは食品や日用品、洋服だけでなくなんとsimカードまで買えます。
朝食は軽めだったのでトマトやバナナなどを買ってその場で食べました。
ダニエルがどこからか買ってきてタジキスタンの伝統的な帽子を被っています。危うく私も買いそうになってしまいましたが、これ以上荷物を増やしたくなので思いとどまることができました。


私はなぜか非常に荷物が多くて、何度か荷物の整理はしているのですがどうしても減りません。ただ、これから冬にかけてヨーロッパに入る可能性があるのでどうしても防寒着のカサが多いというのもあるのですが…。
アルティナが私の荷物が多いのを見て、「これならあなたはどこででも生きていけるわね」と茶化します。
朝、バザールが開いたばかりの時間帯だったからか人はそこまで多くはありませんでしたが、私個人としてはこのようなバザールの雰囲気は、その土地の人たちの息吹を感じることができて好きです。

ニコニコ手を振ってくれて可愛い(≧▽≦)
このバザールでの私たちの目的はsimカードで、その目的も果たしたので出発することにしました。
この日走るムルガブからランガーまでの道のりは、道路状況は悪いという事前情報を得ております。
しかし一方でこの道の中盤からはアフガニスタンとの国境をなす川沿いを走るワハーン回廊と呼ばれる道になり、このパミールハイウェイを走るライダーにとっては楽しみな場所の一つでもあります。
確かにムルガブからワハーン回廊までの道路状況は穴ぼこだらけのアスファルトと硬い尖った石の転がるダートを繰り返すためお世辞にも走りやすいとは言えませんが、難所があるわけでもないため転倒のリスクはそれほど高くはありません。


大好きな写真\(^_^)/

ただ、ワハーン回廊に入った途端にほとんどがダートになりました。
途中かなり深いサンド(砂地)もあるため、この辺りは慎重に走らないと転倒する恐れがあります。

ワハーン回廊に入ってしばらくすると、マイケルからオートバイの状態があまりよくないという訴えがありました。
どこかで休憩がてら修理をする?と尋ねるともう少し先に行けば広めの河原があるようだからそこで休憩しようという話になりました。
しばらく走ると確かにそこには河原が広がっています。そしてどうやったらこんな色になるのかと不思議な、とても美しい白藍色の川が流れています。

どうしてこんなにキレイな色をしているのでしょう??
草地に乗り上げてオートバイを停めます。
するとマイケルがガソリンバーナーで火をおこし始めました。
なるほどここで昼食にするのか!?
ついつい私は野外での食事はテントを張ってキャンプをするときという固定概念を持っていたため、適当な食事場所を見つけられなかった場合は昼食を抜くことが多かったのですが、昼食だってこうやって道端で自炊したって良いんですよね(*´Д`)
みんなで持ち寄った食品を囲んで綺麗な河原で食事をしたこの日の昼食は、生涯忘れることのない輝きに満ちた思い出です。

そしてこのとき私はやっぱりロシア人の気配りや丁寧さには心底感心するのです。バルナウルでお世話になったバイカーズクラブのアンドレも、この旅最悪のできごとがあったウランウデのドミトリーのおばちゃんもそうでしたけど、ロシア人は丁寧で気配りができる人が多いという印象です。
そしてここにいるダニエルもアルティナも本当に素敵な人たちです。
アルティナは日本人の女性に多く見られるような心配りをしてくれます。みんなの食器を用意したり、空いた器があるとすぐさま川に行って洗ったり。なぜロシア人はこんなにも気配りができるのか不思議であり感心してしまいます。

素敵な昼食の時間でしたが少しこの場に長居し過ぎてしまいました。
タジキスタンに入ってから感じるのは今までに比べて日が沈むのが早いということです。ロシア-モンゴル-カザフスタンと走ってきてそれらの国々では夏至のころというのもあったのですが、遅いと22時くらいまで日が沈まず、キルギスタンでも20時ころまでは明るかったのですが、ここタジキスタンでは19時を過ぎるころには日が沈んでしまいます。
未舗装路で切り立った崖を走るワハーン回廊でのナイトランは危険です。
よし行こうとなってマイケルとアントニオが先に行った後、ダニエルが出発したのですが、砂地の軽い登りでスタックしてしまいます。我々4人の中で抜群に運転のうまいダニエルですらこのようなことになることがあるのですから、今後私も一人で走ることになったときには本当に気を付けないといけません。

一人になったら本当に気を付けないと…( ̄□ ̄;)!!
アルティナはメイン道路に戻った時点でダニエルの後ろに乗ろうとすでに先に歩いて行ってました。
私とダニエルの二人だけではここからオートバイを脱出させるのは不可能だったのでアントニオに大きく手を振ると気づいてくれてアルティナと一緒に戻ってきてくれました。
私、ダニエル、アントニオ、そしてアルティナの4人がかりでアフリカツインを引き上げます。このとき驚いたのがアルティナの力の強さです。この人女性ですけど私よりも力強いんじゃない?ってくらいの馬力でオートバイを引っ張りあげていました。
やっぱりおそロシアです…。
昼食でのんびりし過ぎてしまい、日が傾き始めたので先を急ぎたい私たちでしたが、やはりマイケルのオートバイの調子が良くなくペースを上げることができません。
とりあえずダニエルとアントニオに前を走ってもらい、その後ろにマイケル、そして最後に私が続くという陣形にしました。もしマイケルのバイクに何かあった場合に気づかずにマイケル一人を置いていってしまうのは危険なため、私が一番後ろを走ることにしたのです。
ダニエルはアルティナを後ろに乗せてのタンデム走行であり、アントニオについてはこの道を走るということに運転スキル的に余裕がなかったようなので前を走ってもらいます。アントニオについては確かにオイオイ無茶するなよって運転をするときがあるなとは思ってはいましたが、そういうことだったとは私はこのときまで気づいてはいなかったのですが。
ということでこの陣形にしたのですが、タンデムであってもダニエルの運転スキルは抜群に高かったため、それがいけなかったのかもしれません。
マイケルのスピードが上がらないため前の二人は見えないくらい先に行ってしまっていたのですが、ふと見ると前方に呆然とアントニオが立ち尽くし、倒れたオートバイが転がっていました。
ダニエルについていこうとしてスピードを出したまま深いサンド(砂地)に突っ込んでしまい、前輪を取られたようで180°ターンして転倒したというのがわかります。
ここのサンドはかなり深く、足場が悪いため我々3人でバイクを起こすのも大変でした。
食事のときなどは非常に陽気なアントニオですが、表情が硬く無口です。
どこか怪我をしたのか聞くと、転倒した際に右足を酷く捻ってしまったようです。とりあえず歩くことはできるということでしたので、とにかくゆっくり慎重に転倒しないようにランガーの町まで行こうということにしました。
しかし不味いことにほとんど日が沈みかけています。慎重に走ればそこまで難しい道ではないのですが、強風が吹き、隣は切り立った崖で、この中をナイトランは危険です。かといって道幅もそれほど広くない強風が吹く崖の横でのキャンプも難しいでしょう。
とにかくランガーの町までは15kmほどで、アントニオの足もそこで処置したいので慎重に進もうという結論にいたりました。
日が沈んで路面状況が良く見えない中、崖のすぐ横を走るのは想像以上に怖く、精神的にも消耗するものです。
しかし幸いなことにそこから30分ほどでランガーの町に到着し、道端で遊んでいた男の子がこの町の宿まで案内してくれました。
宿に着き、オートバイから荷物を下ろしているときにアルティナが私を心配して話しかけてくれました。
「大丈夫?疲れたんじゃない?」
「全然そんなことないよ。むしろ今日は楽しかったよ。」
そう答えるとアルティナは勘違いしたようでこう言いました。
「あなたって勇敢で強いハートの持ち主だったのね。」
いやいやいや。全然そんなことありません。
「そんなことないよ。(西モンゴルやソンクルとか、うんざりするような未舗装路を延々と走ったときは)いつも一人だったから、今はみんなと一緒に走れて楽しくて仕方ないんだよ。」
するとアルティナが答えました。
「そうなのね。なら素敵なニュースがあるわ。」
そう言うとこう続けました。
「明日もみんな一緒よ。」
思わず涙が溢れそうになりました。明日もみんなで一緒に走れる。今の私にとってそれ以上に嬉しいことはあるでしょうか?
部屋に入ると宿の人にお願いしてバケツに冷水を入れてもらいます。アントニオの足首を冷やすためです。予想以上に腫れています。歩けていることを考えると骨は折れていないとは思われますが、痛そうです。
「今も痛むの?」と聞くと「ああ、まだ少し痛い」と答えます。
心配そうに見ていたらアントニオがこう言いました。
「大丈夫だよ。心配しないで。大丈夫だからそんな顔しないでよ。笑って。」
どうしてここにいる人たちはこんなにも優しいのでしょうか?
「この惑星に吹け 優しい風」。私のステッカーにはそう記載されています。
でも、私が言わなくても、この惑星にはたくさんの優しい風が吹いています。
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アルティナさんの一言
ドマラチック過ぎます!
僕もいつか…
なんて考えますね!
本当にこのときのメンバーはみんなとても素敵な人たちでした。
津田さんも願えば必ず実現できます。
人生は挑戦し続ける限り輝き続けます!