8月25日(日)東京出発79日目、タジキスタン3日目 ランガー~ホログ 走行距離217km

朝起きて、アントニオの足の具合を確認します。昨日よりは多少腫れも引いて、なんとか行けそうだということでした。いずれにせよランガーのような小さな町よりもこの日目指すホログなら町自体も大きいですし、休養を取るにしろ何かするにしろホログまで行けるなら行ったほうが良いのは間違いありません。
幸い昨日走ったムルガブからランガーまでよりも、この日走るランガーからホログまでの方が道路状況も良さそうです。
この時期はパミールハイウェイを走るチャリダーやバイカーの数も多いので私たちの存在はこの地域でそれほど珍しい存在ではないと思うのですが、それでも宿の子供たちは興味深そうに我々のことを見つめています。

男の子の左手のバンドをカッコいいねと誉めると、ツーリストがくれたと自慢気に見せてくれました。
女の子たちはよく家の手伝いをしているようです。本当に感心します。


子供たちに手を振り出発します。
事前情報通りこの日走った道は前日よりもだいぶ走りやすいです。しかし一つだけ困ったことがありました。
水が買えないのです。ランガーの町にあったお店に行ったのですが、水を置いていないというのです。昨日の残りが多少あるのですぐに困るというわけではないのですが、水がないというのは不安です。
それでも仕方ないのでこのまま進むしかありません。
しばらく行くとガソリンを給油できる場所にきました。怪しいおじさんがバケツからガソリンを入れてくれます。
ダニエルがこのおじさんから聞いた話によると、このおじさんが使っている目盛りのついたバケツは旧ソビエト時代に作られたものだというのです。

大変貴重だけれど、品質は最悪だなとダニエルが言います。
でも陽気で楽しいおじさんに挨拶をして出発します。

この日はだいぶのんびりと走ることができました。途中町を通過すると遊んでいる子供たちが笑顔で手を振ってくれます。途中の町で無事水を手に入れることもできました。
この地域の子供たちは男の子も女の子も大変美しいです。旅行者が多いので、通過するライダーやチャリダーに手を振るのがこの子たちの楽しみの一つでもあるのでしょう。

最初ははしゃいで手を振っていましたが、スマホを向けたら緊張して一気に笑わなくなりました(;´д`)
途中で水を買うために立ち寄った町のお店でバイクを停めて休憩していると、子供たちが遠くから何かこちらに向かって叫んでいます。単に旅行者である私たちにちょっかいを出しているだけだと思われます。
私は最初は普通に笑顔で手を振って応えていたのですが、突然思いっきり全力でダッシュをしてその子たちを追いかけるとみんなビックリしたようで一目散に逃げていきました。私はいきなり全力で走ったものだから足がもつれて前のめりに転んで砂だらけになります。
それを見てダニエルもアルティナもマイケルもアントニオも大声で笑っていました。
昼食は途中にあった道端のカフェで摂ります。タジキスタンの伝統的なスタイルでは椅子に座ることなく地べたに座って、食事も地面にクロスを敷いてその上に置くのですが、これに対してダニエルが「日本も椅子に座らないで床に直接座って食事を取るんだろ?タジキスタンのスタイルと似ているのか?」と聞いてきます。
そう言われてみると最近は日本でも畳に直接座って食事を取っている家庭も減ってきているような気がします。
サザエさん一家は夕食は椅子に座っていませんし、クレヨンしんちゃんの野原家でさえも椅子に座っていないなぁとは思うのですが、現在では多くの家庭が椅子に座って食事を取っているのではないでしょうか?
なので、最近は日本も西洋風のスタイルで椅子に座って食事を取ることがほとんどだと伝えると、そうなのかぁと興味深そうにダニエルは聞いていました。


この日もゆっくりのんびり走っていたため、ホログの町に着いたときには日が沈んでいましたが無事になんとか宿に着くことができてホッとしました。
ホログの町に入る直前にパスポートチェックがありましたが、係員も非常にフレンドリーで、このときも心配していたようや賄賂の要求などは一切ありませんでした。
ここの係員が最初私を見て、へらへらと笑いながら小馬鹿にしたように「ニーハオ」と言ってきました。するとダニエルが彼は日本人だ!というと、その係員は目を丸くして「日本人ですか。それは失礼しました。」と姿勢を正しました。
海外にいると中国人と間違えられることが非常に多いです。我々が欧米人がどこの国の人なのか見ためだけで判断できないように、外国人からしたらアジア人がどこの国の人かわからず、人口が多く海外に進出している比率の高い中国人に間違えられるのも無理はありません。
相対的に海外にいる数が少なく、高品質な工業製品を輸出している日本人は日本人というだけで少しだけ特別な印象を持っていただけているようです。
私が同じように日本で育ち日本で教育を受け日本で働いていたとしても、もし国籍が中国籍だったとしたらそれだけで同じようには扱ってはもらえないだろうと思うと大変くだらないことだとは思うのですが、中国人に間違えられることをあまり快く思わない私がここにいます。
中国人であっても日本人であっても立派な人はいます。私は日本人ではあるけれども立派な人ではありません。そう思うとなんて器の小さい人間なのだろうと思ってしまいます。
噂には聞いていましたがホログの町はこのパミールハイウェイの中でも非常に大きな町なので少しホッとします。
私も調子に乗って宿に併設されている食堂でビールを購入し中庭で飲もうとすると、そこにはすでにアントニオがビールを一本空けている状態でした。
このおやじは全くどうしようもないです。足を捻って痛め止めの薬を飲んでいるにも関わらず、さっそくビールの二本目を空けていやがります。
私もベンチに座ってビールを飲み始めるとダニエルとアルティナが隣に来ました。
私がヒューガルデンを飲んでいるのを見て、アルティナが言います。
「ヒューガルデンはベルギービールだけど、実際に作っているのはロシアだったりするのよ。ちょっと見せて。」と言って私の飲んでいる瓶を手に取ると「ほら、製造国ロシアって書いてある」と教えてくれます。
そんなことってあるんですね。日本のサッポロやサントリーが製造を中国でやっているようなものでしょうか?でも食品はやっぱり日本で作って欲しいなと思ってしまうのは、私自身もどこか日本品質神話を信じている一人だからでしょうか?うーん、でもここまで旅をしてきてロシアで製造だったら全然良いなと思います。彼らなら信頼できます。
今度はダニエルが私にいろいろと質問をしてくれます。恐らく前日に私がアルティナに「(大変な未舗装路を走ったときは)いつも一人だったから」と言ったことが気になっていたからだと思います。
「ヒデはここまで旅をしてくる中でつらいこととか大変だったことはなかったの?」
「いやいや、たくさんあったよ。特にモンゴルの西側を走ったときは転んだりもしたし、大雨が降って前も見えなくて寒くて寒くて仕方なくて。人工物が360°見渡す限り何もないところもあったんだ。怖くて怖くて、あのときは何回も『お家に帰りたい』って思ったよ。」
それを横で聞いていたアルティナは笑っています。
でもダニエルは真剣です。
「そんなに大変な思いもしたのに、それでもヒデはこの先も旅を続けてアフリカまで行こうって思うの?怖くないの?」
「うーん。確かにアフリカはちょっと怖いって思うこともあるかな。でも何も知らないからね。知らないから怖いってのもあるし、知らないから本当の怖さを知らずに行こうって思うのもあるのかもしれないね。」
そういうとダニエルは答えました。
「ヒデ、お前は本当に勇敢な男だよ。なかなかできることじゃない。ま、まさか、ヒデはフグに挑戦したこともあるのかい?!」
全く勘違いしています…(;^ω^)
まず私は勇敢でもなんでもありません。ヘタレでビビりのヘナチョコです。西モンゴルだって普通に通過している人はたくさんいるのに、私は一人で半べそかいてお家に帰りたいとか言っていたのです。
それにフグに挑戦したことがあるのか?って、フグは高いからそれほど食べる機会がないだけで、フグに当たったっていうニュースだって数年に一回あるかないかくらいですし。
「食べたことあるよ。俺は旨いと思うし結構好きだな」と答えると、「なんでそんな命を懸けるようなことをするんだ!?お前がつくづく勇敢な男であることはわかったけど、とにかく無事に南アフリカまで行ってくれることを心から願うよ。」
うん。やっぱり勘違いしています。でも、ダニエルは日本の文化に大変興味を持っているようです。
フグを食べるシチュエーションっていうのはどういう時なのか?と聞かれて「うーん、確かにあまり家族とか友人と一緒に食べに行くってことはそれほど多くはないかな?イメージ的には政治家の会合や、ビジネスマンの接待で使われるイメージが強いかもしれない」と答えると、「日本でビジネスをやるっていうのは大変なんだな。それだけみんな命がけで真剣に仕事をしているってことか。」とまた妙な解釈をしていました。
夜も更けてきてベロンベロンに酔っぱらっているアントニオが言いました。
「ちょっと体調も良くないから、私は明日は一日ここでゆっくりしようと思う。」
ま、私も少し疲れているからそれでも良いかなと思ったのですが、ダニエルとアルティナは違ったようです。
「俺たちは日程もあるし、恐らくみんなとは違ってパミールの北側の湖に行きたいから、明日の体調次第ではあるけど、もしかしたら明日出発するかもしれない」
少なくともドゥシャンベまではみんなで一緒に行けると思っていたのでショックでした。
私はダニエルとアルティナと一緒に行きたいという思いもあります。マイケルもバイクの調子次第でもともと予定していたパミールの北側の更に別のルートを走りたいという思いもあるようです。
私は特段どこに行きたいという意思が無いのにもかかわらず、ダニエルとアルティナ、マイケルまで出発してしまった場合に、怪我をしていて尚且つただでさえこのパミールハイウェイを走るのに苦労しているアントニオを一人残して出発することには心苦しさを感じます。
ダニエルが「ヒデはどうするんだ?」と聞いてきました。
優柔不断な私は「うーん。朝起きて体調を見て決めたいと思う。」と答えるのが精一杯でした。
そしてこの日の夜は、標高が高い場所でビールを飲んで酷く酔っ払ってしまったせいか、それとも明日みんなバラバラになってしまうかもしれないことがよほどショックだったのか、この旅に出て初めて、ほとんど眠れない夜を過ごしたのでした。
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一緒に写真撮ってる女の子めちゃ綺麗ですね。 ヒデさんの鼻の下、ユーラシア大陸くらい果てしなく伸びてますよ。
Toitoitoi (元)生意気アルバイト
小澤
おぉ!
オザ!!
ブログ読んでくれているんだね。ありがとう!
元気にしてる??たまにはtoitoitoiにも遊びに行ってあげてね。
俺は本当に毎日毎日刺激が強すぎて鼻血が出ちゃいそうだよ(*´Д`)