8/28(水)東京出発82日目、タジキスタン6日目 ホログ~カライクム 走行距離226km

朝食を済ませるとマイケルはテスト走行に出かけます。
私はゆっくりコーヒーを飲んで待つことにしました。
するとしばらくしてアントニオが私のところにやってきました。
「ヒデ、マイケルから連絡があって、やっぱりどうもオートバイの調子が良くないらしいんだ。マイケルはこれから紹介してもらったホログにいるオートバイのメカニックのところに行くらしい。でもやってみないと修理にどれだけ時間がかかるかわからないみたいなんだよ。私はマイケルを待とうと思う。でもヒデは先に進みたいと思うなら待たずに行くべきだと思うんだ。」
私は正直どうしたいのか、自分がどうすべきなのかわからなくなっていました。
「少し考えるね。」とだけアントニオに言いました。
ダニエルとアルティナがいなくなって、少しの間一人になりたいと思う時間もありました。一方でトラブルを抱えるマイケルとアントニオを置いていくことに心苦しさも感じます。
でも本当にそうでしょうか?私たちの得ている情報によると、これから私たちが行くホログから先の道が、このパミールハイウェイの中で一番道路状況が悪いとなっています。
私はマイケルとアントニオを置いていけないなんて言いながら、自分がこの先の道を一人で行くのに不安を抱えていて、結局は二人に頼ろうとしているのではないのでしょうか?
アントニオが待つと言っているのであれば、マイケルもアントニオも一人ぼっちにはならないのです。そう考えたら私まで一緒に待つ理由は無いような気がしたのです。
アントニオのところに行き伝えます。「ごめん。やっぱり一人で行こうと思う…。」
アントニオは「わかった。それが良い。正しい判断だと思う」と言ってくれました。
身支度を整えてバイクに荷物を積みます。
駐輪場で作業をしていたアントニオに挨拶をします。
「本当に楽しかったよ。ありがとう。」
するとアントニオが言いました。
「ヒデ、何かトラブルがあったら遠慮なく連絡してくるんだぞ。いいか、決して無理はするな。とにかくあわてないでゆっくり走るんだ。とにかくゆっくりだ。」
いつも走っているときは全然頼りないくせに、こんなときになって父親みたいなことを言うんだな。
そんな風に言わないでくれよ。
そんな風に言われたら溢れ出てくる涙が止まらないじゃないか…。
今まで何度か西モンゴルでつらい思いをして半べそかいたなんて話をしてきましたが、この旅に出て本当に涙を流したのはこの時が初めてでした。
どんなに我慢しても、とめどなく溢れ出る涙をこらえることができませんでした。
アントニオとハグをしてお別れします。
ずっと止まらない涙で視界が滲む中一人で走り始めます。
本当にこの決断は正しかったのかどうかはわかりません。たくさんお世話になったはずのマイケルに挨拶をしないで出発してしまったことを批判される方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも私はこのとき思っていたのです。マイケルにはこの先どこかで必ずもう一度会えるに違いないと…。



羊飼いが道を作ってバイクを通してくれました

ヘルメットを取るとアジア人だったことに驚いていたようですが、オートバイに興味津々でした
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