本当のさよなら

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9/2(月)東京出発87日目、タジキスタン11日目 ドゥシャンベ

ダニエルとアルティナはこの日ドゥシャンベを離れます。二人を見送るため朝食を済ませた後、2人が宿泊している宿に行きます。

宿に到着すると私が連絡する前にアルティナが出てきてくれました。

「オートバイの音がしたからヒデだと思って」と、本当につくづく彼らの気遣いには関心してしまいます。

宿の庭に行くとダニエルがアフリカツインのフロントタイヤのパンク修理をしています。

フロントタイヤを外して
パンク修理をしているダニエル

チューブを見るとパンク修理の跡だらけです。確かキルギスタンとタジキスタンの国境の間で再会したときもフロントタイヤのパンクを修理するために2回も出直したと言っていました。

本当は新しいチューブを買いたいらしいのですが、ここタジキスタンではバイク用のタイヤチューブを手に入れられなかったそうです。

ダニエル:「ヒデ、ちょっと待っててくれないか?近くにラグマンとプローフの美味い店があるらしいんだ。時間あるなら、これ直した後に一緒に食べに行かないか?」

2人は今日出発なのだから本来なら早めに出たいはずなのに、私のために時間を作ってくれるその気遣いが本当に嬉しいです。

 

ダニエルがパンクの修理を終えると一緒に近くにある食堂に歩いていきます。

ダニエル:「マイケルとアントニオはお腹の調子がだいぶ悪いみたいだけど、ヒデは大丈夫なのか。俺もタジキスタンに入ってからずっとお腹の調子が良くないんだよ。」

私:「俺は今のところ大丈夫かな。」

アルティナ:「さすがは日本人。普段から生魚食べてるから何食べても大丈夫なのね」

ダニエル:「生魚じゃないよ。ヒデはフグ食ってるから何食っても大丈夫なんだよ」

この旅でこんな風に冗談を言い合える仲間が洋介さん以外にもできるなんて思ってもいませんでした。本当に素敵な仲間に巡り合えたことを心から感謝します。

 

お店に着いて食事が出てくるのを待っていると、ふとしたことから私の年齢を聞かれました。

私:「38だよ。」

アルティナ:「そう、じゃ私たちとほとんど同じね。」

私:「え、マジで。二人は俺よりずっと若いと思ってた。」

アルティナ:「私は今29歳で今年30歳よ。ダニエルは今年29歳。ほとんど変わらないでしょ。」

私:「俺、28歳じゃないよ!38歳だよ」と言って手で3と8を作ります。

ダニエル、アルティナ:「…」

ダニエル:「日本人っていうのは何歳になったら白髪が生えるんだ?ロシア人で38歳っていったら禿げてるか白髪かのどっちかだぜ。」

アルティナ:「私のお姉ちゃん今年32歳だけど、もうほとんど全部白髪よ。」

私:「そんなの人によるでしょ。確かに日本人は若く見られがちかもしれないけど」

私自身は日本にいるときは特別若く見られることも老けて見られることもあまりありませんが、欧米人から若く見られる理由はなんとなくわかります。

一つ目は体格が彼らに比べて小さいこと。

二つ目は私の覚束ない英語がまるで小さな子供が喋っているように感じさせてしまうこと。

三つ目が世間知らずで彼らのように旅慣れていたりオートバイに詳しかったりしないこと。

そんなことから私は実年齢よりも若いというより、だいぶ幼く見られてしまうのだと思います。

アルティナ:「ヒデが、大学卒業したてで、働きに出る前に世界を見ておこうって言って旅に出た25歳って言われても信じてしまうわ」

なるほど、ダニエルとアルティナが私にいろいろと気を使ってくれていたのは、きっと危なっかしい弟のように思っていたかなのだろうとこのとき思いました。

だとしてもこの二人の気遣いは本当に素敵だなと思うのですが。

するとダニエルが私が年上だとわかったからなのか、ちょっと別の難しめの質問をしてきます。

ダニエル:「ちょっと重たい内容になってしまうかもしれないから、答えたくなければ答えなくても良いんだけどさ。ずっと日本について疑問に思っていたことがあるんだ。聞いても良いかな」

私:「もちろん。俺に答えられることなら」

ダニエル:「今って日本とアメリカって同盟国で仲良くしてるよね?でもさ、日本は第二次大戦で原子爆弾などアメリカに酷いことたくさんされたよね。それなのにどうして仲良くできるの?恨みとかはないの?」

私:「恨みとかはないかな。多くの日本人は戦争については戦争そのものが悪かったって考えていて、アメリカだけが悪いとは思っていないんじゃないかな。アメリカよりもむしろ当時の日本の軍部が悪かったっていう考えの方が多いと思うよ」

そう答えていてふと思いました。私自身も特段アメリカに対して恨みとかは全くありません。もちろん原子爆弾や焼夷弾による空襲などは民間人を巻き込んだ大量虐殺であり、肯定して良いものではないとは思っていますが。

この私の考えの根底にあるものは単に日本の教育がそうであるからだけなのだと思います。

小さいころに、戦争をしたのは日本の軍部であり、日本があそこまで大きな被害を受けたのは当時の日本の軍部が悪かったからという風に教え込まれたからだと思います。

もちろん、「アメリカは最低なことをやった。絶対に許してはいけない」なんていう教育が正しいとは思いません。恨んだところで何も生みません。

一方で、なんでもかんでも日本が悪かったっていう教育も絶対に正しいとも思わないのですが。

ただ、やっぱり教育っていうのは恐ろしいと感じます。第三者であるロシア人から見ても、日本がアメリカを恨んでも仕方ないと思うようなことも、当事者である日本人がアメリカに対してそれほど大きな感情を抱かないというだけの意識を教育というものは植え付けてしまうのですね。

教育は感情にまで影響を及ぼしてしまうということが本当に怖いことだと思います。

私の回答にダニエルはどう感じ、何を思ったのかわかりません。そもそも納得したかどうかも。

ただ、ダニエルは本当に日本について大変な興味を持っているということだけはわかりました。

 

食事を終えて二人が宿泊していた宿に戻ると、ついに本当のお別れのときです。

前回は心の準備もないままに不意打ちをくらったようにお別れを言わなければなりませんでしたが、今回は私の中できちんと受け止めてお別れができます。

ダニエルとアルティナとがっちり握手をしてお別れを言います。

この素敵なカップルが未来永劫仲良く助け合って生きて行ってくれることを心から願って。

笑顔で両手を大きく振る私と爽やかな風を残して、この素敵なカップルは再び二人の旅路を走り始めるのでした。

心から、ありがとう
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