サーシャとの約束

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10/23(水)東京出発137日目、セルビア3日目 ベオグラード

この日は前日に撮影したレントゲン写真を持って歯医者に診察を受けに行きます。

とりあえず宿の方に紹介していただいた歯医者の方が宿から近かったので、そちらに行くことにしました。

レントゲン写真を見せるとすぐに呼ばれて、私の歯には問題が無いと言われます。問題が無いと言われても確かに痛みがあるので、何かしらの原因があるのではないかと訊ねるのですが、私にはわからないので、もし心配なら他の歯医者を当たってくれと突き放されてしまいました。

仕方ないのでもう一軒、私の方で調べていた歯医者に行ってみたのですが、そちらでも歯には問題はなさそうだと言われます。2〜3日様子を見て、もしまだ痛むようならもう一度来てくれと言われるのですが、歯が痛くなり始めたのは2週間近く前からなので、2〜3日様子を見た所でどうにもならないと思うのですけれど…。しかし、わからないものはわからないのでしょうから仕方ありません。

 

うーむ、困りました。このまま放置してアフリカに入ってからさらに悪化してしまったら最悪です。もう一度自分で他の歯医者を探して診察してもらうか…。

とりあえずこの日はこれ以上どうすることもできないので、散歩をしつつ昼食を摂るために適当なレストランに入りました。

川沿いを散歩します

このレストランは川沿いに広いオープンテラスを構えています。

オープンテラスで昼からビールなんぞ飲んで\(^_^)/
夕暮れ時もこのばしょから見える景色は綺麗でした

ちょうど私が食事を終えた頃に一人の少年がやってきて、「お金をくれないか?」と言ってきます。

私は「申し訳無いけど、お金をあげることはできない。」と言います。

しかしこの男の子は私をジッと見つめたままそこを動きません。そして今度は「どうしてもお金をくれないの?お腹が空いているんだ」と言います。

私は、私が必要としているサービスを受けない限り、ただでお金をあげることはしません。なぜならお金をあげてしまえばその人がその先働くチャンスを奪ってしまうことになり、その人がその人の力で自分の人生を切り拓く動機を奪ってしまうことになると考えているからです。

しかし、食べ物という形であれば私は差し出しても良いと思っています。食べるということは生きるエネルギーに繋がると思うからです。

私は「お金はあげられないけど、それじゃ何か食べるか?」と聞くと、その男の子は嬉しそうに頷くのでした。

「じゃ、そこに座りなよ。チーズケーキでも良い?」と聞くと、満面の笑みを浮かべて席に座ります。

この男の子の名前はサーシャ。年齢は13歳。小学校8年生と言っていたので日本の中学2年生に当たる学年だと思います。英語は喋れるのかと思っていたら、ごくごく簡単なことしかわからないようです。すると私とサーシャのやり取りを聞いていた、すぐ隣のテーブルに座っていたご年配のご婦人が通訳をしてくれたので大変助かりました。

サーシャが私のテーブルに座っているのを見た店員がやってきて、サーシャにどこかに行くように言います。私が「良いんです。彼は私の友人です。チーズケーキを彼に一つお願いします。」というと、渋々納得したようで、チーズケーキを運んで来てくれました。

サーシャは夢中になってチーズケーキを食べます。私と目が合う度に「good!good!」と言って親指を立てて笑うのでした。その顔を見て私も嬉しく思いました。

私は隣のテーブルのご婦人に、あることをサーシャに伝えて欲しいとお願いしました。

「どうか一生懸命勉強してください。知識は必ず君を助けてくれるはずだから」

そう言うと、このご婦人は目を真っ赤にしてサーシャに伝えてくれました。

するとサーシャは「うん。わかった。僕はロボットやアンドロイド、人工知能とかに興味があるんだ。そんなことを勉強したいなぁ」と言います。

私は「そうか。夢は叶うよ。じゃ、勉強するって約束だよ。」そう言って右手を差し出して握手をしました。

隣のテーブルのご婦人が席を立ってお帰りになられるときに私に声をかけてくださいました。「今日、私はあなたに会えたことをとても嬉しく思います。お話をしていてあなたが大変輝かしい精神と勇敢な心を持った人だということが伝わってきました。どうかこれからの旅もご無事に、そして素晴らしいものになることを願っています。」

私は自分を恥ずかしく思いました。私はただただ運が良かっただけの人間です。運良く日本という恵まれた国に生まれて、出会った人が良かっただけの人です。

それなのに私は子どもに対して偉そうに勉強しろなんて言っておきながら、自分はこうしてただ海外をプラついているだけです。

でも、このご婦人が私とサーシャとのやり取りを見たことにより、この後に出会う人に優しい気持ちで接してくださったなら、私はあの日あの場所にいたことには少しは価値があったのではないかと思うのです。

サーシャと一緒に(^_^)

ご婦人がいなくなった後、サーシャはもう一度私にちょっと上目使いで「やっぱりお金はくれないの?」と聞いてきます。

サーシャは英語をほとんど解せないので翻訳アプリで伝えます。

私は「それはできない。」とだけ答えます。サーシャは「どうして?」と訊いてきます。

「お金は自分で働いて稼がないとならない。人から恵んでもらってはいけないよ。だから一生懸命勉強して自分で稼げるような立派な大人になって。」と伝えます。

するとサーシャは真剣な眼差しになり、コクリと頷いてくれました。

そしてサーシャは立ち上がると、きちんと椅子をテーブルの下にしまい、もう一度私にコクリと頷いて立ち去っていくのでした。

 

ただの旅行者に過ぎない私の話を真剣に聞いてくれてありがとう。この子が自分の未来を自分の手で切り拓き、そしてこの子の未来が幸せなものになることを願ってやみません。

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