12月21日(土)東京出発196日目、モーリタニア3日目、セネガル1日目 ヌアクショット~サン・ルイ 走行距離 272km
やっとの思いでモーリタニアを出国しセネガルの入国手続きに入ります。事前情報では警察に入国印をもらって税関で一時通行証を作ってもらうだけの簡単な手続きだと聞いていたので、簡単に考えていたのですが、パスポートを提示すると「セネガルのビザはどこだ?」と聞いてきます。いやいや、日本人はセネガルのビザは不要だから…。そのように伝えると「そんなわけあるか!」と言ってきます。
ビザが無いならスタンプは押せない!と…。いやいやいや。そんな馬鹿な。私が「日本人にビザが必要になったのはいつからですか?」と聞くと「ずっと前からだ」と言います。
こいつ知らないだけだなと思って私の中で少し安心しました。
しかし頑なにスタンプを押してくれません。そしてしまいには「帰れ」と言ってきます。
腹が立ちますが、揉めたところで状況は悪くなるだけでしょうし、この担当官ではラチがあかないので、最悪ここにテントを張って、明日別の担当官になったら通してもらえば良いかとも考え始めました。
そうこうしていると他の担当官が何やら言ってくれたようでここで待つように言われます。
待っている間、モーリタニア側から黒人の家族がやってきました。父親らしき人が入国の手続きをしているのですが、何やら揉めています。きっとあの担当官が嫌がらせをしているのではないでしょうか?この家族はどう見てもここを頻繁に通過しているような慣れた雰囲気で、難癖付けられているような雰囲気です。
その家族の中の高校生くらいの抜群にスタイルの良い女の子が私に声を掛けてきます。
女の子:「どこから来たの?」
私:「日本からだよ」
女の子:「ワォ、Cool!」
日本人ってだけでCool(カッコイイ)って(-_-;)
女の子:「日本からバイクで来たの?驚きだわ!ねぇねぇ、日本語を教えてよ。Helloって日本語で何て言うの?」
私:「こんにちは」
するとその女の子はフフフと笑いながら「こんにちは」と大変綺麗な発音で言います。
女の子:「じゃあさ、Good Byeは?」
私:「さようなら」
するとまた完璧に近い発音で「さようなら」と言います。
女の子:「How are you?は」
私:「元気ですか?」ってこれは猪木くらいしか使わない言葉だけれども…。
しかしこの女の子はまたまたほぼ完ぺきな発音でアハハハと笑いながら「元気ですか?」と言うのです。
何だろうと思っていると「私、日本のアニメが大好きでこれらの言葉は何回も聞いていたから知っていたの。生で日本人が喋るのは今回初めて聞いたけど」
と言います。
そうこうしているうちにこの父親が手続きが終わったようで、またこの女の子は完璧な日本語の発音で「さようなら」と言って去って行きました。
そこから一時間ほど待たされて、やっとのことで呼ばれました。あのクソ担当官は何事も無かったようにそこに座っていて質問してきます。
「お前、セネガルのどこに行くんだ?」
「ダカールに行きます」
「どこに泊まるんだ」
「日本人が経営している『シェ山田』です」
「住所を言え」
えっ…。住所なんてわからないし…。
仕方ないので地図アプリで「シェ山田」の位置を見せるのですが「これじゃ住所がわからないからダメだ。はい、タイムリミットだ。帰った帰った」
このクソ野郎、恐らく自分が知らなかったことを指摘されて私に嫌がらせをしているのでしょう。本当にこういうどうしようも無いやつっているんですよね。
「ちょっと待ってくれよ。インターネットにさえ繋がればすぐに『シェ山田』の住所はわかるんだって。インターネットを使わせてくれないか?」
と言うものの、当然この担当官は「タイムリミットだ。帰れ」と言います。
もうモーリタニア出ちゃったし帰るわけねぇだろ!
そんな風に押し問答をしていると他の職員が何かこの担当官に言ってくれてようやくスマホを貸してくれて『シェ山田』を検索することができました。
そして『シェ山田』のフランス語のホームページを見せるとようやくそこで入国印を押してくれました。
本当に疲れました。
今度は隣の建物の税関で一時通行証の書類作成をしてもらいます。さきほどからしつこくしつこくセネガルの保険に入るのを手伝うぞと言ってくる男を無視し続けているのも疲れました。
こちらの建物ではあっさりと書類を作成してくれたのですが、保険作る作る男がうるさくて仕方ありません。
ただ、確かにセネガルでは自動車保険への加入が必要なのでここの担当官に「この男はさっきからしつこいのだが、信頼できる男なのか?」と聞くと「あぁ、大丈夫だ。こいつは知り合いだし、ちゃんと保険の手続きをしてくれるぞ」と教えてくれます。
周りにいる人たちにも「こいつは良い人間なのか?嘘ついたり騙したりしないのか?」と聞くと「この男は大丈夫だよ」とみんなが言います。
みんながそういうのならということでこの男に付いて行くとすぐ裏の食堂に連れていかれてそこから出てきたおばちゃんが保険の手続きをしてくれます。このおばちゃん見たことあります。
そう、昨年南アフリカまで走ったメタボンさんもこのおばちゃんに西アフリカ共通の保険を作ってもらっていました。
このおばちゃんと話をしてみると説明もしっかりしていて大丈夫そうです。
なので私もここで保険の加入をお願いすることにしました。3か月で52ユーロ(メタボンさんの情報では53ユーロだったので私は1ユーロ安く加入することができました)。
やっとこれでセネガルへの入国手続きがすべて完了しました。
15時前には国境に到着していたのにトラブルに次ぐトラブルで結局セネガル側の国境を出たのは17時半を過ぎていました。
もうこの日は国境のすぐ隣のセネガル第二の都市サン・ルイに宿泊することにしました。
サン・ルイは街自体が世界遺産に登録されている美しい街だそうですが治安は良くないようです。
暗くなる前に宿を探さねばと少し焦ります。
しかしセネガルに入るとモーリタニアとは雰囲気が一変します。あれだけ砂に覆われた大地だったモーリタニアに対してセネガルは大変自然豊かです。バイクで走っていると猿やガゼルなどの野生動物をたくさん見ます。
衝撃的だったのがあれだけ綺麗な見た目のガゼルが、サン・ルイの街の中に入るとゴミを漁っているのです。
いやぁ、すごい国ですね!
サン・ルイの街に到着して宿を探そうとバイクを走らせていると、ピカピカのフォードが並走してきて「おい!お前はどこに行くんだ!」と叫んでいます。
軍か警察かと思って停車すると、大変身なりの良い明らかなお金持ちとわかる若い二人組が降りてきて「この先には何もないぞ。お前どこに行くんだ?」と聞いてきます。
私は「今晩泊まる宿を探しています」と答えると「わかった。俺たちが案内してやる。どんな宿をさがしているんだ?」と言ってくれました。
「安くてバイクを安全に泊められるところが良い」というと「よし!まかせろ!俺たちのあとをついてこい!」と言います。
これはありがたいと思ってこの車の後をついて行きました。
しかし、メイン道路から外れてどんどん人気のないサンド(砂)の深い道に入って行きます。
もしかしてこいつら悪い人??と思い始めると怖くなりました。このまま人気のないところに連れていかれて拳銃でも出されたらひとたまりもありません。
後ろから激しくクラクションを鳴らして車を停めます。
「おいおい!一体どこに行くんだ?」と私が聞くと「ああ、あと数キロも走ればバンゴという村に着く。そっちの方が安全にバイクを停められるし、安くていいホテルがあるんだ。」と言います。
「でも、ここ行くのはおれはスゴイ怖いぞ」と正直に気持ちを伝えます。すると二人は笑いながら「大丈夫だ。あとほんの少しだから安心しろ」と言いました。
うーむ。彼らはどうみてもお金持ちに見えるし、地図アプリを見ても確かにこの先にバンゴと言う名前の村があるので、彼らを信じてついて行くことにしました。
本当に砂漠の中なのではないかと思うほど深いサンドの中を走ってようやく到着したホテルは確かにとても綺麗で良いホテルでした。
しかし値段を聞くと28000CFA(約5600円)。今までで最高価格のホテルです。この二人は本当にお金持ちなのでしょう。彼らからしたら格安なのかもしれません。
しかも私はまだセネガルに入ったばかりで西アフリカの通貨CFA(セーファ)をほとんど持っていないのです。
私はどうしようか迷ったのですがまたあの深いサンドの中をこれから引き返して、しかも日が沈みかけているこの中を一から宿探しするのは厳しいと思いました。
しかしお金が足りません。
カードも使えないようでした。私がお金が足りないことを二人に話をすると、仕方ないから他の宿を探してくれると言います。しかしすでに暗くなり始めている中、砂漠の真っただ中のような深いサンド(砂地)地帯をまた走るのが億劫であったことから、「ATMが近くにあればお金を引き出せると思うんだけど」と言うと、この二人の紳士はATMまで連れて行ってくれると言ってくれました。
お言葉に甘えてここから数キロ離れたATMまで連れて行ってもらい、この日はこのホテルに泊まることにしました。
途中疑ってしまったこの二人ですが、私をホテルまで送り届けると名前すら名乗らず「良い旅を!」と言って去って行きました。
いろいろなことがありすぎたセネガル初日。疲れ切った私は比較的戒律の緩いイスラム国であるセネガルのホテルで一か月ぶりくらいのビールを飲んで、この高級ホテルでゆっくりと眠りに落ちて行くのでした。

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