1月9日(木)東京出発215日目、ギニア2日目 クンダラ~ボケ手前120km地点 走行距離172km
時刻15時半過ぎ。
赤土のダートの上で休憩をしている私とリョウさん。
ボケの街まで残り120kmの私たちはこの時点で安全面を考えると、今日中にボケまで行くのは断念せざるを得ません。
しかし、近くに宿のあるような村があるとも思えず、かと言って野営できるような場所を探し出すのも簡単ではなさそうです。
リョウさんの残りの体力を考えてもやみくもに動き回ることは避けたい私たちですが、どうすることがより高い確率で危険を回避して寝床を確保できるのか?
日没まで多少時間のあるこの時点でなんとか答えを見つけないと危険な状況に陥り兼ねません。
どうするか…、、何が正解なのだろうか…。
すると休憩していた我々の目の前に一人の青年が現れました。現地の言葉なのかフランス語なのか、何やら私たちに話しかけてきます。
全く言葉がわからないのですが、敵意が無いのはわかります。
するとその青年のすぐ後ろにはごくごく小さな集落があるのが見えました。
すかさずリョウさんが「auberge(宿)auberge(宿)」と言うのですがそれも通じないようです。
リョウさんが両方の手の平を合わせて頬の横に当て首をかしげると通じたのか通じないのか、俺たちの集落に来いと言ったようなしぐさをします。
この集落には2~3件の家しかありませんが、たくさんの子供たちが遊んでいることからも安全そうに見えました。

私たちは渡りに船だと思い、この青年の住んでいるであろう集落に行くことにしました。
集落に入り、とにかくこの辺りでテントを張らせてもらって今晩一晩寝かせて欲しいと伝えるのですが「tent」も「camping」も通じません。

私が以前キャンプした時の写真を見せて、少し広い開けた場所を指さすと理解してくれたようで、それならあの辺りににテントを張るようにという仕草をしてくれました。
この青年が示してくれた場所の近くにはアリ塚のようなものがあったのですが、すでに火で焼き払われていたため、アリの襲撃の心配もなさそうです。
こんな田舎の集落で外国人のしかもライダーが訪れることは大変珍しいことなのでしょう。どこからともなくたくさんの子供たちが私たちの様子を見に来ます。

たくさん集まって来ちゃいましたね(>_<)
大変古い型の携帯電話を取り出してしきりに私たちの写真を撮っている子もいます。
あっという間に私たちはたくさんの子供たちに囲まれてしまいました。
言葉が全く通じないので何をするわけでもないのですが、この子たちはずーっと私たちを囲んでただただ見ているのです。
中には私たちのバイクに興味を示し、遠慮しながらたしなめられない程度にバイクを触る子たちがいます。
この状況でテントを建てたら中に入ったりして遊んだりされそうで怖いので、とにかくこの子たちがいなくなるのを待っていました。
しかし日が傾きかけてもこの子たちは何をするわけでもなくじっと私たちを見つめていて私たちのそばを離れません。

どうにかしようとリョウさんが荷物からグミを取り出して子供たちに手渡すとものすごい勢いで奪い合いが始まります。中にはケンカを始める子供たちもいました。
リョウさん:「しまった…。食べ物の威力はすさまじすぎたな…」
しかし、実際問題そろそろテントを設営しないと蚊も出てくるでしょうから、仕方なく私は最後の手段に出ました。
両手を広げておちゃらけた振りをしてワァーっと言って笑いながら子供たちを追いかけます。
子供たちは最初は驚いたようですが、ケタケタケタと笑いながら逃げ惑います。
これは使えると思い、そのまま遠くまで子供たちを追いかけて追っ払うと最後に「バイバーイ」と言ってバイクの所に戻りました。
子供たちは遠くから我々の様子を見ていますが、テントを設営し始め、少しでも子供たちが近づいてくると私が「バイバーイ」と言って手を振るものだから、それ以上は近づいては来ませんでした。


テントを設営し終え、夕飯の支度をし始めると子供たちは更に近くに寄ってきます。
大変申し訳ないとは思うのですが、私たちも非常食には限りがあるためこの子たちにあげるわけにもいきません。
私はこういう時は本気で冷たくなれる人間なので、さっきまでとは違って笑顔を作ることなく「こっちに来たらダメだよ!」と言って冷たく突き放します。
子供たちも、このオジサンは僕たちにご飯は分けてくれないんだ…と認識したようで諦めて離れていきました。
子供たちに優しくできなかったことは大変申し訳なかったのですが、最初に私たちに声をかけてくれた青年のおかげで私たちはピンチを脱することができ、本当に助かりました。
日も完全に落ちて就寝の準備に入ります。
明日はボケまでの残り120km強を走ります。私の予想としてはおそらくその道のほとんどがこの日と同様の赤土のダートであるだろうと思っています。
この日のリョウさんの疲労具合を考えると、明日は走行距離も短いので、慎重に確実に走り抜くことを最優先に考えないといけません。
私はこの赤土のダートを走行することは楽しかったのですが、それはリョウさんがいて一人ではないという安心感が余計にダートを楽しんで走れているということが頭から抜け落ちていました。
そして自分本位な私はリョウさんがダート走行を益々嫌悪するようになってしまうとさらに旅の自由度が減ってしまうのではないかということが心配になったりしていました。
しかし一方では私一人の考えを押し付けるのもいけないことだと思い、二人で旅を続けていくにあたり、どのように折り合いをつけていくべきなのか頭の中でグルグルと考えを巡らせながらこの日は眠りに落ちていくのでした。
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