1月31日(金)東京出発236日目、コートジボワール5日目、ガーナ1日目 アビジャン~タコラディ 走行距離315km
短かったコートジボワールの滞在ですが、アンゴラビザ用の書類のプリントアウトとリョウさんのバイクの修理を終えて、満を持してガーナに向かうことができます。
ギニアから入ってヤムスクロまではコートジボワールは予想していたほど発展もしていなく、道路状況も良くなかったのですが、ヤムスクロからアビジャン、そしてアビジャンからガーナ国境までは大変道路も綺麗で、街も綺麗に整備されていました。
コートジボワール側の出国手続きではどの建物ですれば良いのかわかりにくく戸惑ったりもしたのですが、手続き自体は煩雑なことも無く、難なく出国することができました。
次にガーナの入国手続きですが、ガーナは公用語が英語のためそれだけでも大変ありがたかったです。
ガーナはJAFの情報ではカルネが必要だと記載されていませんが、実際にはかなり厳しくカルネを見るようです。もしカルネを持っていない場合、ガーナ入国は大変面倒なことになるようですので、もしガーナ入国を考えているライダーがいましたら、カルネを準備することをお勧めします。
ガーナの入国手続きをしているとどこからともなくおじさんがやってきて、リョウさんの入国カードの記載を手伝い始めました。
このおじさんはいったい誰なのでしょうか?ここの職員なら良いのですが、そうでないならまたお金をせびられたり面倒なことになりそうで嫌です。
先に私が入国手続きを終えてリョウさんを待っていると、私のバックパックに括りつけられた、ダカールのゴレ島で買ったアサラトを見たここの職員が「それ得意だから俺に貸してみろ」と言ってきます。
アサラトを貸すと、予想に反してヘタクソです。それを見た他の職員が俺に貸してみろというのですが、その彼もヘタクソです。
でもガーナ人はそれでもみんなで踊って楽しそうです。それを見ただけでガーナってなんかいい国だな??って思えるのでした。
リョウさんも手続きが終わり、バイクの所に戻ると案の定さっきのおやじがやってきてリョウさんに何か言っています。
しかしリョウさんは英語が得意でないため、このオジサンが言っていることがわからなかったようで、諦めたおじさんは私のところにやってきて話かけてきます。
おじさん:「なあなあ、俺手伝ってやっただろう。なんでも良いんだよ。なんかくれないか?」
おいおい、それを俺に言ってくるなよ。リョウさんはこういう人全然拒まないで受け入れちゃうから困るんだよ。
めんどくさいけど金くれでもないし、実際に手伝ってくれたからタンクバックの中に入っていたビスケットをあげることにしました。
するとそれを見ていた全然知らない長身の男が「おいおい、俺にもなんかくれよ」と言ってきます。
私は「彼は我々の入国手続きを手伝ってくれたんだ、でもあなたは別に何もしてくれていないだろ。」と言いました。それでもその男はじっと私を見つめて「何かくれよ」と言います。
私は目も合わせることなく「あなたは何かしてくれたわけでは無いので何もあげませんよ」と言い、そのままバイクで立ち去ることにしました。
国境を出たすぐのところに銀行があったためガーナの通貨セディーをおろします。
私がお金をおろして戻ってくると、リョウさんが見知らぬ男と話しています。
するとその男は今度は私のところに来て「フランス語はわからないんだ。英語だけど良いかな?」と言ってきます。何だろうと思ったのですが、リョウさんが「そいつ腹減ってるから金くれって言ってるみたいですよ」と言ってきたので、私は冷たく目をそらして「sorry」と言って追っ払いました。
どうやらこの国は「金くれ物くれ」の国のようです。
しかし、ガーナに入って走り始めるとあることに気付きました。今まで走って来たセネガルやギニア、コートジボワールと比べて全然生活水準が高そうなのです。まず立ち並んでいる家々がしっかりとした作りです。
そして今までの国は道端に落ちているゴミが酷く、大変な悪臭を放っていたのですが、ガーナはゴミこそ落ちていますがその量は圧倒的に少なく、町がクリーンなのです。
入国してから少し走ると検問をしていました。
パスポートとカルネの提示を求められました。
リョウさんのパスポートを確認した警察官が我々の滞在期間は1か月だと言いました。
えっ…。それって今日から数えて1か月ってこと??
コナクリの大使館では申請した1月16日から1か月って言われたんだけど。
その警察官に確認すると入国した1月31日から1か月だから2月末まで大丈夫だと言います。それが本当なら大変ありがたいです。アンゴラビザの取得にどれだけの時間がかかるかわからなかったため、2月15日期限ですと厳しいかもしれないと思っていたので。
ただ、この警察官一人の意見では本当かどうか確証が持てないので、首都アクラに着いたらきちんと確認しにいくことにしました。
そこからしばらく走ってリョウさんがトイレのためにバイクを停車させると前から一人のチャリダーがやってきました。
そのチャリダーは私に話しかけてきました。
チャリダー:「やあ、君たちは向こうから来たってことはこのまま南アフリカを目指すのかい?僕は反対に南アフリカからここまでやってきたんだ。」
私:「はい。あなたの言う通り南アフリカまで行く予定です。どこの国の方ですか?」
チャリダー:「僕はベルギー人だ。君たちは?」
私:「日本人です。南アフリカからここまでどのくらいかかったんですか?」
チャリダー:「今でちょうど6か月くらいかな。そういえば君たちはナイジェリアはどうするんだい?ナイジェリアのビザは取れたのかい?」
私:「いえ。ナイジェリアビザの取得は難しいって聞いているので、ベナンからカメルーンかガボンに船で渡ろうと思っています。」
チャリダー:「やっぱりそうか…。僕もナイジェリアビザは取得できなかったからカメルーンからベナンには飛行機で渡ったんだ。ところで君たちはアビジャンを通過してきたのかい?ならば象の巣には行ったのかい?」
私:「象の巣??なんですか?それは?初めて聞きました。」
チャリダー:「象の巣を知らないのかい?もったいない。有名な場所らしいから僕は行ってみようと思うんだ。良い旅にしてな。それじゃあな」
私:「ありがとうございます。あなたも素敵な旅を!ガーナ-コートジボワール国境はイージーですよ!」
チャリダー:「それは知っているよ!ありがとう!」
そういうとこのチャリダーは去って行きました。
リョウさんが私に「あの人、コンゴとかコンゴ民主のことは何か言っていましたか?」と聞いてきて、しまった!と思いました。
南アフリカからこちらに向かってやってくる旅人は大変レアです。この旅一番の難所になるであろうコンゴとコンゴ民主の生の情報を聞くチャンスはなかなかありません。大変もったいないことをしました。
その後、私たちは途中立ち寄った町で昼食を摂ることにしました。
ここでも屋台飯なのですが、今までの国に比べると格段に清潔です。例のごとく味も良いのですが、金額も7セディー(約140円)と格安です。
コートジボワールでは屋台でぼったくってきたことも考慮すると、安くて美味しくて清潔なガーナってすごい良い国なのではないかと思えてくるのでした。
その後、この日目標としていたタコラディの町を目指します。しかし途中から酷いスコールに見舞われました。雨に降られたのはダカールを出発してから初めてのことでした。
スコールはやはり一時的なもので、タコラディの町に着くころにはすっかり止んでいました。
タコラディの町に着くと給油するためにガソリンスタンドに寄ります。
私が給油している間、しきりに話しかけてくる男性がいます。私はてっきりこのガソリンスタンドのスタッフだと思っていました。
給油が終わるとその男性は私に、併設された売店で何か買って行けよと言います。
ガーナは今までの国に比べて物も豊富で物価も安いので売店の中を覗いてみることにしました。
そこで私は非常食用にとクッキーを手に取り買おうとしたのですが、その男は私と同じものを手に取ると私と一緒にレジの所にやって来て、私が当然払ってくれるだろうという態度です。
私:「いやいや。何で私があなたの分を買わないとならないんですか?買いませんよ」
男:「なんだって!お前、俺の友達だろ。買ってくれないのかよ!お前、悪い友達だな!」
意味がわかりません。
私がガソリンスタンドのスタッフの女性に、この男は誰なんだと聞くと、隣の工場のメカニックだと言います。
仕事も持っているのに私がこの男に物を買ってあげる意味がわかりません。
しかし、その後ガソリンスタンドの女性がリョウさんに「なんであなたの友人は彼に何も買ってあげないの?」というようなことを言ったそうです。
うーむ。私にはガーナという国がちょっとわかりません。
しかし、私の目の前であの男があまりにもしょげているので仕方なくビスケット渡してあげることにしました。
すると男は「お前はグッドフレンドだ!」と言って大喜びでその場でビスケットを「うまいぞ、こりゃうまい」と言って食べていました。
本当にこの国は「ものくれ」の国ですね。
日がだいぶ傾いたころ、私たちは目星を付けていた宿に到着しました。
中から出てきた女性スタッフに予約はしていないが今夜二人宿泊できないか?と聞くと「ごめんなさい。今日は予約でいっぱいなの」と言います。
マジか…。今から別の宿を探すのも億劫です。なので私は「部屋が無いならここの駐車場でキャンプをさせてくれないか?」と尋ねました。
するとその女性職員は「オーナーに確認してみるからちょっと待っててね」と言います。
しばらく待っていると「オーナーと連絡が取れないからもう少し待ってて」と言いに来てくれました。
リョウさんは地図アプリで他の宿を調べています。
私はあの女性職員がとても丁寧に対応してくれているのでここでキャンプして良いということでしたらそうすることに決めました。
私:「あの人、一生懸命対応してくれているから私は許可が出たらここでキャンプします。もしリョウさんは宿にちゃんと泊まりたいなら他を探して、いいところが見つかればそっちに泊っても良いですし、もし見つからなければここに戻って来ても良いですよ。私はここにいるので」
リョウさん:「シャワー使わせてくれるならキャンプでも構わないので待ってみます」
しばらくすると女性スタッフがやってきて、「一部屋片づけるからそこ使ってもらっても構わないけど、その部屋で大丈夫かどうか先に見てもらっても良い?」と言います。
部屋を見せてもらうとどうやらスタッフの控室のようです。シャワーも付いていたので全くもって十分です。
その部屋に泊めさせてもらうことにしました。
荷物を部屋に運んでから、食堂で何か食べることはできないか聞いてみます。
女性スタッフ:「何が食べたいの?」
私:「何が食べられるんですか?」
女性スタッフ:「食べたいものを言ってもらえれば用意できるか確認するわ」
なんじゃそりゃ…。メニューがなければ注文するのは難しいですよ。
私:「じゃ、ガーナ料理を何か作ってもらうってできますか?」
女性スタッフ:「ガーナ料理?○×※<゜)*)彡とか?」
うん?聞き取れない。わからないから良いや。
私:「じゃ、ピザとかできます?」
女性スタッフ:「ピザね。確認してくるわね」
少ししてその女性スタッフが戻ってきましたがピザのデリバリーは終わってしまってるからできないと言います。その代わりパスタなら作れるわよと言ってくれました。
私:「パスタ。パスタ良いですね。それでお願いします」
そういうとこの女性スタッフはわざわざ食材を買い出しに行ってパスタを作ってくれました。
他の女性スタッフと楽しそうにパスタを作っている声も聞こえてきます。
普通ならレストランはやっていないから食事は出せないって言われても仕方無い状況ですが、彼女たちは嫌な顔せず、むしろ楽しそうに私たちをもてなしてくれました。
ガーナ初日。いきなりたくさんの人と出会い、この国は「物くれ金くれ」の国でもありますけど、陽気で明るい人が多く、私は良いなと思いました。