2月17日(月)東京出発253日目、ベナン5日目 コトヌー
前日は日曜日だったため特に何かできることがあったわけでもなく、大人しく宿でブログを書くなどをして過ごしました。
そして月曜日になり、スラドゥさんと話をしたようにまずはこの日はコトヌーで取れるビザの申請に行きます。
ここ、コトヌーで申請するビザは3つです。バイクを輸送予定のガボン、その隣のコンゴ、更にその次の国のコンゴ民主(旧ザイール)です。
ガボンとコンゴのビザは申請日当日に発行されるということなのですが、問題はコンゴ民主のビザです。
一年ほど前まではここコトヌーでも取得可能であったのですが、第三国(自身が居住している国以外)でビザを取得した人たちが実際にコンゴ民主の国境まで行って入国できないという事態が発生して、コトヌーでも自国及びその周辺国以外の人へのビザ発給を停止したという情報も得ていました。
しかし、ここはアフリカです。日々情勢は変わります。ダメもとで私たちはコンゴ民主のビザ申請にも行くことにしました。
朝、私が朝食を済ませて部屋に戻るときに我々が滞在している部屋の隣の部屋からヘルメットを持った年配の白人男性が出てきました。
前日の夕方に私と全く同じ青いテネレさんがこの宿にやってきたのは認識していました。
私:「あなたはあの青いテネレさんのオーナーですか?」
白人男性:「ソウデス。アナタモ、アオイテネレニ、ノッテイルノデスカ?」
どうやらこの男性は英語はほとんど話せないようです。
それでもいろいろと話をしてみるとこの方はスペインからここまでやってきて、我々と同じようにここコトヌーでガボン、コンゴ、コンゴ民主のビザを取得すると言っていました。
彼は自国であるスペインでナイジェリアビザを取得してきたので、このままナイジェリアに行けるようです。
私はロメで出会ったマックスの話を思い出し聞いてみました。
私:「ナイジェリアからカメルーンには陸路で抜けるのですか?」
スペイン人男性:「ワカラナイ。コッキョウハトテモキケン。センソウシテル。」
その話は初めて聞きました。もしかしたらちょっとした小競り合いなのか、それとも睨みあっているだけの状態なのかもしれませんが、英語のあまり得意ではないこの男性は「war(戦争)」と表現していました。
マックス…。大丈夫なのか?
一昨日ナイジェリアに向かったマックスのことも心配になりました。
一旦この男性とは別れて出発の準備をします。
まず始めに申請から30分程度で発行されるというコンゴビザの申請に行きます。
コンゴ大使館は唯一コトヌーの中心部から外れた場所にあり、我々もバイクで向かいます。

コンゴ大使館の前の道はそこそこ深いサンド(砂)ですが、荷物を積んでいないテネレさんならそれほど難なく走れます。しかしNC700に乗るリョウさんは大変そうです。
無事コンゴ大使館に到着すると、先ほど宿で出会ったスペイン人男性はすでに申請を終えて発行待ちの状態でした。
我々が到着したのを見るとわざわざ表まで出てきてくれます。
スペイン人男性:「コノミチ、スナ、ハシルノタイヘン」
私:「そうですね」
スペイン人男性:「コンゴ、ウキ(雨季)、マディ(泥道)、ハシルノモットタイヘン。アナタタチ、フタリ、デモワタシ、ヒトリ、コロンダラタイヘン。オコセナイ。スコシシンパイ」
そうなのです。この旅で恐らく一番の難所となるのがガボンの次に走るコンゴです。1年のうち9か月が雨季にあたり、ガボンからコンゴにかけての300kmほどがそれはそれは酷い泥道で、多くのライダーを苦しめているのです。
湿度も高くほぼ赤道直下の高温下で酷いマディ(泥道)。
宿やお店も少なく補給もままならないので、脱水症状などのリスクも伴います。宿の環境も大変悪くマラリアのリスクも高いため、特に雨季に単独での走行は命がけになることもあります。
しかも最近またエボラが流行の兆しを見せ始めているようです。普通に行く分にはまず大丈夫だと思うのですが、マラリアや転倒して怪我をしたなどで病院に行かなければならなくなったときなどはそこでの感染のリスクも伴います。
でも正直私はずっと葛藤がありました。
このコンゴの区間は単独走行してみたい。でも一人で行くのも怖い。でもやっぱり一人で行くことで見つけらるものってたくさんあるのでは?一人で行くから価値があるのでは?
そして実のところ私はリョウさんはコンゴには来ないかもしれないとつい先日まで思っていたのです。
ギニアであれほど未舗装路を走ることを嫌がっていたリョウさんです。あれとは比べ物にならないだろうと思われるコンゴなんてもってのほかで、ここコトヌーで船を探すタイミングで私がガボンやカメルーンにバイクを送っても、もしかしたらリョウさんはさらにずっと先の環境の良いアンゴラかナミビアあたりに一気にバイクを送るって言うかもしれないと。
私はもしリョウさんがそう言うのであればそれは全く受け入れるつもりでした。
私には私の旅のスタイルがあり、リョウさんにはリョウさんの旅のスタイル、旅に対する考え方があるのです。
ですのでそれは悪いことではないのです。もし怖いとか不安だという気持ちが強くて、リョウさんが比較的安全に走れると思うところに行く手段があるならば、その時点で別れるというのは一つの選択肢としてあっても良いのです。
ダカールから二人で出発してからここまで、この旅の主導権のほとんどを握って来たのは私です。リョウさんはあの優しい性格から私に対して言いたくても言えないことがたくさんあったでしょう。腹が立って仕方なかったことも嫌になることもたくさんあったと思います。
そしてここまで、私がどんどん勝手に判断して物事を進めてきてしまっているので言いたくても言い出せなかった可能性もあります。いや、もしかしたら勝手に私が物事をどんどん決めて押し進めてしまうので、そんなことを考える隙すらリョウさんに与えることができていなかったかもしれません。
そう考えると大変申し訳なくも思うのです。
しかし、この日、リョウさんは当たり前のように私と一緒にコンゴビザの申請にやってきました。
であれば私たちは一緒にこの区間を走るということで良いと思います。私はやっぱりどうしても一人で行きたくなったから別れましょうとは言いません。
もちろんリョウさんが「もうヒデさんと一緒にいることは耐えられません。一人で行きます!」というのであればそれは仕方のないことですけれども。
事前に調べていた通りコンゴビザは申請してから一時間もしないうちに発行されました。
大使館職員も大変丁寧で、我々がビザを受け取って「メルシー(フランス語でありがとうの意味)」と言うと、「ボンボヤージュ(良い旅を)」と言って見送ってくれるのでした。
次に行くのはガボンビザの申請です。ガボンビザも当日発行されると聞いています。
そのままバイクでガボン大使館に行きます。
ガボン大使館では入り口でスマートフォンを預けないと中に入れません。
そしてビザ申請の担当職員の方はほとんど英語が話せないので、翻訳アプリでフランス語の翻訳をしたいのですが、スマートフォンが無いためコミュニケーションに少し手間取ります。
しかし、申請自体は難しいことは無く、申請用紙に必要事項を記入して、証明写真2枚、パスポートコピー、イエローカード(黄熱病予防接種証明書)コピー、我々がバイクによるツーリストということで自動車登録証のコピーを渡して申請は完了です。
すると担当女性が「午後3時に発行されますのでそれ以降に取りに来てください」と言います。
3時までパスポートがホールドされてしまうとこの日もう一つ予定していたコンゴ民主ビザの申請には行けないかもしれないなと思いつつ、もともと取れない可能性の方が高いのでそれはそれで良いかなと思いました。
午後3時。
約束通り、ガボン大使館にビザを取りに行きます。ガボン大使館は滞在している宿から1kmほどしか離れていないので徒歩で向かいます。
ガボン大使館に行く途中、下校中の小学生らしき集団がたくさん歩いていました。
その中の何人かの男の子たちが私たちにふざけながら絡んでくるのですが、結局はお金くれって話でした。
綺麗な制服を着て学校に通うこの子たちはそれほど貧しいようには見えません。日本人である私の感覚からするとこのようにお金を無心するのは良くないと思ってしまいます。大人たちも外国人を見ると「お金くれ」とか「何かくれ」と言ってくる人がいますが、彼らにとっては普通のことなのでしょう。
別に自分たちよりお金を持っている人たちに物乞いするのは別に良いんじゃない?っていう考えも世の中にはあるかもしれませんが、私は受け入れがたいです。
そういうことはみっともないことだという教えが日本の社会の根底にあると思います。私はその考え方は誇り高く美しいと感じています。
ただそれだけです。
ガボン大使館に到着すると間もなくビザが発行されました。
宿に戻ろうと入り口で入館カードの返却をしていると朝のスペイン人男性もやってきました。
私:「コンゴ民主のビザ申請には行きましたか?」
スペイン人男性:「イッタヨ。デモキョヒサレタ。リユウヲキイタケレド、コトバガワカラナイノデ、リカイデキナカッタ。カメルーンノヤウンデデモウイチドチョウセンスル」
やっぱりかぁ…。コトヌーでコンゴ民主のビザが取得できないとなると、本来ならばカメルーンの首都ヤウンデで取得するしか道はありません。
我々はカメルーンもスキップしてガボンに入国予定ですので、このままコンゴ民主のビザが取れないままになる可能性が高いです。そうなった場合はコンゴからアンゴラの飛び地カビンダに入って、またここでも船を使ってコンゴ民主をスキップする必要があります。
できるだけ陸路での縦断をしたいという思いが私にはありますので不本意ではありますが、最悪その道も視野に入れる必要があります。
それでも少しでも可能性があるならと念のためコンゴ民主大使館にも言ってみることにしました。

コンゴ民主大使館に行く途中にいました。
レインボーアガマではないようです
我々がコンゴ民主大使館に到着したのは15時45分くらいでした。
入り口でビザの申請がしたいと言うと受付の方は別の人に相談し、「もう今日は終わってしまったから明日もう一度来てくれないか?」と言います。
うん…?。
拒否されないということはもしかして可能性があるのか?!
朝8時には開くということでしたので、次の日の朝一で再度訪問することに決めました。
とりあえずこの日、最低限取得したかったガボンビザとコンゴビザは無事取得することができました。
この日はこの後、更にスラドゥさんとの打ち合わせがあります。
スラドゥさんに電話をすると、すぐに行くとの返事をいただきました。
つづく…。
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