敗北宣言

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3月5日(木)東京出発270日目、ガボン14日目 ンデンデ 

今朝方に出発したフランス人ライダーから無事に今後のドリジーに到着したという連絡が来ました。

「朝方に来た輸送業者が言うようにここンデンデから70kmまではなかなかに酷い道(彼らの腕前からしたら大したことは無いかもしれませんが)だったけれども、そこから先は全然難しい道では無かったよ」と写真付きで教えてくれました。

そして怪我をしている私が走行するのは難しいのであれば、リョウさんだけでもそこは自走した方が良い、というのも、この道は大変美しく、行く先々でとても親切な現地人と触れ合うことができるでしょう。ということでした。

それを聞いて、私はどうしてもこの道を走りたくなりました。なんとかならないものか?朝方に来た業者に70km先までバイクを運んでもらって、そこから自走するってできるのでは無いか?そういう思いが強くなりました。

私:「リョウさん。今朝来た輸送業者に70km先まで運んでもらって、私はそこから自走したいです」

リョウさん:「何言ってるんですか!実際に行ってみて大変な道だったらどうにもならなくなってしまうじゃないですか!今回はここから近いところで転んだからなんとか戻って来られましたけど、そんなところで同じようなことになったらどうにもならなくなってしまうじゃないですか!」

私:「リョウさんには無理には勧めません。ちょっと高いですけどあの業者にドリジーまで運んでもらえばそこから先は舗装路になります。でも私はあの道を走りたいのです。なのでリョウさんはご自身で判断してください。私は例え一人でもあの道を走ろうと思います」

リョウさん:「何でなんですか!70km先まで運んでもらっても残り200km以上悪路なんですよ!例えばもっと先まで運んでもらって残り100km以下とかだったらまだわかりますよ!なんでそんなに走りたいんですか!」

半ばヒステリックにリョウさんが怒ります。

私には全く理解できません。

ダカールから今まで一緒に走ってきましたが、このガボン-コンゴ間の悪路を越えれば南アフリカまで難所とよばれるようなところは無いはずです。ドリジーまで行けばその先はリョウさん一人でも走れるはずです。ここから先は自己判断の世界になるのですから、あの道を走りたくないのであれば先に一人で行ってもらって全然構わないのです。

リョウさんはどうしてそんなに別々になることを恐れるのでしょうか?そりゃ一人と二人では安心感は全然違います。今回の件ではリョウさんには大変助けていただきました。しかしバイクは自由な乗り物です。できるだけ縛られたくないからバイクという手段を選んでいるのではないでしょうか?

そして私とリョウさんは旅に対する考え方も生活のリズムも全然違います。そしてこれまでは旅のリズムについてはほとんどすべて私の独断で決めてきてしまったので、リョウさんにとってはストレスだったはずです。

私も日本とは違うものを見て体験したいからこの旅を続けているのです。そのためには多少の困難は当たり前のことであり、それを避けることで求めているものを経験できなければ本末転倒なのです。

この先の難所を超える手段がリョウさんにあるのですからここでお別れで良いと思います。

少しすると、明日の朝に来ると言っていた輸送業者はこの日の夜にやってきました。

私は70km先まで運んでもらうことで話をします。ただし足の怪我が回復しない以上は行けないので数日後に再び連絡することを伝えます。そしてリョウさんにドリジーまで行く場合のことは聞かなくて良いのか確認しました。しかしリョウさんは大変不機嫌ではありましたが「この業者だと70km先までっていうのが現実的なのかもしれませんね」と言って、ドリジーまで行くことについてはこのときは一切しませんでした。

私:「私が再度あの業者に連絡するまで数日はあるので、その間にドリジーまで行くかどうかはゆっくり考えてください」

リョウさん:「…。はい、そうします」

その日の夜中。

激しい雷雨で目を覚まします。すべての音が雨音でかき消されるほどの大雨です。ガボンの雨季にはこのような大雨が一日中降り続くことも珍しいことではないようです。

私は不安になりました。例えそこまでの悪路でなかったとしても、私が70km先からのあの道を通過するときにこのような大雨が降ったとしたらそれは大変困難なものになります。そうなった場合、怪我が無くても困難な道になるのは目に見えているのに到底完治するとは思えない足の状態で行くのは命取りかもしれません。

そして70km先からはそこまで難しい道ではなくなるという情報もどこまで確かなものなのかわかりません。

そう思うと大変不安になってきました。

そういえばテネレさんを回収した日の朝にイミグレーションで出会ったコンゴからやってきたランドクルーザーのドライバーは、ここから250km以上酷い悪路だったと言っていました。やっぱり簡単な道ではないのではないか?

そう思うと怖くなり、明日の朝、イミグレーションに行ってコンゴからやってくるドライバーを見つけたら道路状況を片っ端から聞いてみようと思いました。

実際のところ、この時点でこの雨と雷の音に私の心はポッキリと折られてしまい、私の中で70km先まで運んでもらうという選択肢はほとんど消えかけました。

あぁ、やっぱりドリジーまで運んでもらうかリーブルビルに戻るんだろうなと…。

そしてそのことは、私の中で私自身の恐怖に対する敗北宣言でもありました…。

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