3月11日(水)東京出発276日目、コンゴ共和国4日目 ドリジー
私の足の回復のためと休養およびその他バイクの整備などのためにもう一日この日もドリジーに滞在します。
マイケルとクリスももう一日ドリジーに滞在するようです。
ここの宿では洗車もさせてもらうことができるとマイケルが言っていて、本当は前日に洗車をさせてもらおうと思っていました。
しかし前日は午後から雨が降ってきたため荷物の整理などをするに留めておりました。そのときにはリョウさんと「雨が降ったら洗車もままならないなぁ」なんていう話をしていました。
この日、午前中から宿の裏で水道を使ってマイケルが洗車をしていて、ブラシもバケツも洗剤も洗車に必要なものはすべてここにあるからバイクをここに持って来ればそのままここで洗車できると教えてくれました。
私が宿の中庭でのんびりしていると洗車を終えたマイケルが戻って来たので少し会話をします。
その間にリョウさんは部屋に戻ってヘルメットを持って黙ってそのまま洗車場に行きました。
私はこのときのリョウさんの行動を腹立たしく思いました。
前日に「雨が降ったら洗車もままならないよね」という話をしていて、雨季であるコンゴではいつ雨が降ってくるかもわからないです。先に洗車してもらう分には構わないのですが、「先に良いですか?」の一言くらいあっても良いのではないかと思ったのです。
更にしばらくしてリョウさんは洗車を終えたようですがそのことを私に伝えてくれることもありませんでした。
今まで私はリョウさんとの人間関係をうまく築けてくることができていなかったことが大きな問題だったと思います。
決してリョウさん自体にそんなことは無いとは思うのですが、私の中でリョウさんに対するある偏見があったのも確かです。アフリカの生活では日本ではあまり普段経験しないようなことに直面することがあります。そんなときにリョウさんは躊躇うだろうなと思うような場面がある場合は私が先に率先して体験するようにしていました。私はそこでお互いに躊躇して時間を取られるのが嫌だったので私が先に勝手にやっていました。
私がやった感想を聞いてリョウさんがそれをするかしないか判断することがあったのですが、このときの私は「自分がやりたくないことは人に先にやらせて、自分を優先したいときはコソコソ自分だけ先にやるってとんでもない卑怯者だな」と思いました。
もちろんリョウさんの中ではそんなつもりは全くなかったでしょうし、嫌なことは私が先にやっているという認識なんてあるはずもなかったと思うのですが。
イライラが頂点に達していた私はツカツカとリョウさんのところに向かうと、きつい口調で
私:「なんで洗車をする前に一言『先に良いですか?』くらい聞かないんですか!?洗車が終わったら一言『終わりました』くらいあっても良いんじゃないですか?!」
と言いました。それに対するリョウさんの返事は
リョウさん:「はぁ?なにが?」
でした。
この一言で私はもうさすがに無理だなと思いました。
私:「そんなこともわからないってリョウさんって本当に終わってますね。私はもう無理です。これで終わりにしましょう。私はリョウさんとこれ以上一緒にいるのはもう嫌なので」
リョウさん:「そうですね。俺も嫌なのでそうしましょう」
今まで私とリョウさんとの間で意見の違いがあったときに別々に行こうと言わなかったのは何もリョウさんのためではありませんでした。一人になることにためらいの無い私と、一人になることに不安を感じているリョウさんとではどうしても立場的に私が強くなってしまうのは当然のことです。
そして最初にアフリカを一緒に走ろうと誘ったのは私でした。
その状態で別々に行こうというのは私の中では大変無責任なことでした。私はリョウさんがかわいそうだからとか大変だろうからとかではなく、単に無責任な卑怯者になるのが嫌だったのでそうしていただけで、これまでリョウさんのことを考えるなんていうことはありませんでした。
そしてドリジーまでたどり着いた今、この先南アフリカのケープタウンまでは走る上での難所があるという話は聞いたことがありません。
近いうちに別々に行くことになるのはお互いに何となくは認識していたところではありました。それが今このタイミングになったということでした。


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