2022年8月20日(土)2回目東京出発16日目、この旅トータル301日目 ナミビア3日目 オプウォ~オンジョウェウェ 走行距離258km
キャンプ場でキャンプをしている私。
夜中、不穏な気配で目を覚まします。
どうやら動物に囲まれているようです…。
寝る前も犬の遠吠えなどは聞こえていたのですが、キャンプ場だからと油断していました。
アホな私はテントの中に食料を置いたままでした。
やばいやばいやばいやばい…。
ここはアフリカでした。キャンプ場だって野生動物がいくらでも出没する可能性はあります。
夕方、キャンプ場を見回っている人がいたのですが、銃と大きなナタのようなナイフを持っていました。
そのときは何で銃なんてもっているだよ。嫌だなと思っていたのですが、あれは人間用ではなく対動物用だったのかもしれません。
こんなところで動物に食べられて死ぬなんて嫌です。
周りのキャンパーたちは私以外全員キャンピングカーです。
外に出て助けを求めに行きたいですが、外の状況がどうなっているのかもわからないので外に出ることもできません。
チェックインのときにもらった滞在者カードに電話番号が書いてあることに気付いたので電話をかけて助けを求めます。
しかし夜中の1時半過ぎ。
3度ほど電話をしてみますがやはり出ません。
やばいやばいと思っていると、ガタガタとテントが揺れ始めました。
更にバサバサバサとテントに何か打ち付けてきます。
やばいやばい!
ついに動物たちの襲撃を受け始めたかと思っていたらどうやら違うようです。
強風が吹いているようです。
そして砂が大量にテントに直撃しているようです。
あれ?
私が動物だと思っていたのは風が打ち付けてテントが揺れているのを動物の足音と勘違いしたのでしょうか?
そう思ったら急に安心して眠りに落ちました。
昨晩も21時頃に就寝したので5時くらいには再び目を覚まします。
しかしまだ日も昇っておらず寒いのでテントの中で過ごします。
相変わらず強風はそのまま続いているようです。
とりあえずテントの中に広げた荷物だけ片づけ着替えも済ませ、日が昇るのを待ちます。
7時過ぎにやっと日が昇ったので外に出たのですが、そこで大変な事態が発生しました。
テントの入り口のファスナーを空けたら、大量の砂を噛んでいて完全に壊れてしまいました…。
しかも強風は未だに吹き荒れています。
以前、砂を噛んだファスナーをスムーズにするためにオイルをさすと良いという話を聞いたことがあったので、バイク用のオイルをファスナーにさしました。
悪化しました。
オイルが砂を余計に取り込んでしまい、完全にファスナーは閉まらなくなってしまいました(閉めてもかみ合わずぱっくり開いた状態)。
そして大変な砂嵐です。
他のキャンパーたちも目を覚まして出発の支度をしているのですが、キャンプ場に悲鳴が響き渡ります。
とにかくもう全身砂まみれになり、ほんの少し先も見えない状態です。
ファスナーも壊れてしまい、また同じような環境でファスナーの閉まらないテントでキャンプなんてもう不可能でしょう。
テントを捨てて身軽になってしまうのも一つの手かもしれないと思うのですが、この状況で早まった判断は良くないと思い、とりあえずテントを丸めてパニアケースの中に突っ込み出発の準備をします。
すると隣の老齢のご夫婦キャンパーはすでに支度を済ませたようで先に出発しました。
出発前に私のところに来て声を掛けてくれます。
ご婦人:「あなた大丈夫?すごい砂嵐よね。今日はどこに行くか決めているの?」
私:「まだはっきりは決めていないのですが、とにかく南に向かおうと思います」
ご婦人:「この砂嵐だと視界も悪いから十分に注意して運転してね」
そう言ってご夫婦は去って行きました。
私もなんとか身支度を整えて出発します。
とにかく砂嵐が酷くてほんの数メートル先までしか前が見えません。
砂嵐をやっと抜けたと思っても、更にそのさきに砂にのまれているエリアが迫ってきているのがわかります。
バイクごとその中に突っ込んで行きます。
強風と視界の悪さでとんでもないです。
目も痛い。
そういえばモーリタニアでは砂に覆われ、空気中に常に砂の粒子が舞っているので目や喉の病気が多いと聞いたことがありました。
ナミビアでもこの砂嵐が続くのでは健康被害は大きいのではないかと思います。
100kmほど進むとだいぶ穏やかになってきました。
この日はどこか大きめの街まで行って体制を整えたいと思います。
テントも本当に使い物にならないのか?
もしテントが使えないとすると、この先考えていた旅の日程も考え直さないといけないかもしれません。
さらに100kmほど進むとなんとエトーシャ国立公園入口というのを見つけました。
エトーシャ国立公園はナミビアの北部にあるナミビア最大のサファリ国立公園です。まさかこんなところに入り口があるとは思っていませんでした。
バイクでの走行は不可なのは知ってはいるのですが、もしかしたら中でガイドを雇ったりできるかもしれません。
中に侵入すると、いかにもレンジャーっぽい服装の男たちがいます。
私;「野生動物を見ることはできますか?」
レンジャー:「バイクじゃ中には入れないよ。肉食動物が危ないからな」
私:「ガイドとか雇うことはできないでしょうか?」
レンジャー:「俺たちはここの番をしているだけだからな。そういうのはわからないなー」
仕方ないのでどこかで情報を集めるためにやはりどこか大きな街に行くのが良さそうです。
しかし、そこからさらに150kmほど進むと農場の中にロッジがあるのを見つけました。
のどかな場所のロッジ。
かなり気になります。
2kmくらい進んで行きます。
かなり安易に入り込んだのですが深いサンドにタイヤが取られ思わず転倒しそうになります。
あ!やばい
と思って左右に大きく降られて転倒するかと思いましたがそこはテネレさんの走破性。ヘタクソな私でもギリギリ立て直し転倒せずに済みました。
農場の奥に進むと子供たちが勉強しているようです。
バイクを停めると年配の白人の女性が近づいてきました。
私:「こちらに宿泊することは可能でしょうか?」
女性:「大丈夫よ。キャンプで大丈夫?」
私:「(テントがヤバいからロッジに泊まりたい…)ロッジに泊ることは可能でしょうか?」
女性:「ごめんなさい。ロッジは今日はいっぱいなの…。テントは持っていないの?実は16時からヒンバ族の村を訪れるツアーがあるのよ。良かったら参加しない?」
私:「(え?マジで??すげー行きたい)テント持っています!!(どうにかなるだろ!)あの…、このあたりって夜とか風が強くなったりしますか?昨日酷い砂嵐に遭って、あの経験はもうしたくないんですよね…」
女性:「あら…、それは大変だったわね…。お気の毒に。そうね、実はこのあたりも明け方頃から強い風が吹くの。どうする?やめておく??」
私:「いえ!大丈夫です!!(どうしよう…。なんとかなるよね…)」
女性:「わかったわ。キャンプサイトまで車で案内するからついて来て」
女性が車で先導してくれるのでついて行きます。そこも深いサンドがあるのでとにかく慎重に走ります。
キャンプサイトには誰もおらず自由に使って良いと言います。
想像以上に素敵な場所です。ちょっと無理してでも泊まる価値はありそうです。
女性:「あっちの奥の方にはプールもあるけれど今の季節は寒いから入る人はいないかしらね。16時に迎えにくるからそれまでゆっくりしててね」
そういうと女性は車で戻って行きました。
ただいまの時刻は14時。ツアーまで2時間ほどあります。
テントを設営しますが、やはりファスナーはどうにも閉まりません。
同じく現在北欧を旅している洋介さんに今朝方テントが壊れたことを伝えたら「接着剤で止めたらどうですか?」と返事がきました。
うん、閉まるけど出られなくなります…!
あ、そうだ!太めの補強のテープを持っていることを思い出しました。今夜だけならそれでなんとかしのげるかもしれません。
誰もいないし、とりあえずテントの入り口は開けっ放しでそのまま放置することにしました。
2時間あるので砂だらけの体を洗おうとシャワーを使います。
当然お湯など出るハズもありません。
凍えながらシャワーをすませ、軽い昼食を摂り、あたりを軽く散策したら16時になりました。
女性は迎えに来てくれると言っていたのですが、忘れられて置いて行かれるのも寂しいのでこちらから歩いて先ほどの人が大勢いるところに行きます。
女性:「あら、来てくれたのね。この人がヒンバ族の村のガイド。他の参加者とも合流してから行くから彼女について行ってね」
そうして洋服は着てはいますがなんとなくヒンバ族の雰囲気をかもした女性を紹介してくれました。
彼女について歩いて行くとロッジに泊っているであろう一家族と合流しました。
父親らしき方が気さくに話しかけてくれます。
父親:「わお!バイクで旅しているのかい。どこの国からきたんだい??」
私:「日本からです。」
父親:「日本からずっとバイクで来たのかい?そりゃ驚いた。中国を通って…どうやってきたんだい?」
私:「いえ、ロシアから入り、モンゴル、中央アジア、トルコからヨーロッパに入ってスペインからモロッコに渡りました」
父親:「アフリカはサハラ砂漠を突っ切ってきたのかい?」
私:「いえ、モロッコから南下してモーリタニア、セネガルと西側の海岸沿いをずっと走ってきました」
父親:「なるほど、じゃ、アンゴラからナミビアに入って、南アフリカに行くのかい?そのあとは?」
私:「南アフリカで旅は終えようと思っています」
こんな風にこのお父さんとは会話します。ドイツからの旅行者のようです。
ナミビアはイギリスの植民地でしたが、その前はドイツの植民地だったようで、ドイツ人の旅行者も多いようです。
このお父さんは大変気さくな方で笑顔を絶やさずニコニコと私にもガイドにも話しかけるのですが、奥さんと二人の男の子(中学か高校生くらいの男の子一人と小学生くらいの男の子一人)は全くもってテンションが低いです。
お父さんが一生懸命盛り上げようとしているのが少し切なくもあり、世のお父さんたち頑張れ!!という気持ちにもなりました。
15分ほど歩くとヒンバ族の村に到着します。
彼女たちは英語は話せないのでガイドの女性がいろいろと説明してくれます。
やはりガイドの女性はヒンバ族出身のようで、ヒンバ族の言葉も話せるようです。
うーむ、でも年頃の男の子と奥さんがいて、上半身裸の女性たちの民族の村に行くというのは気まずくないのでしょうか?
私が考え過ぎなのかもしれませんが、私の方がこの家族に気まずさを感じてしまいます。
でもお父さんは一生懸命です。
下の男の子は英語がわからないようで、ガイドの説明をドイツ語に訳してお父さんが一生懸命説明しています。
彼女たちの生活習慣、衣装、家の中の設備や体に塗る赤い塗料の説明を聞きます。
近くに寄らなければ大丈夫なのですが、私はこの赤土と動物の油分を混ぜて作るという体に塗る塗料の臭いがどうにもむせ返るようで苦手でした。
粘土とバターを混ぜたような(材料がそうなのですから当然なのですが)臭いです。
一通りの説明を聞くと、彼女たちがお土産の腕飾りや木彫りの置物などを販売し始めます。
ガイド:「ここで皆さんがお土産を買ってくれると、そのお金は彼女たちの貴重な財源となります。ぜひ彼女たちがこうした伝統的な生活を続けるためにもお土産を購入してあげてください」
ドイツ人親子たちは腕輪などを積極的に腕に巻いてもらい購入しています。
この家族一人当たり200ナミビアドル(日本円で約1,600円)ずつ支払っているので結構な金額です。
私は考えてしまいました。
今までアフリカでたくさんの貧しい子供たちを見てきました。
私はその誰一人に対しても手を差し伸べることはありませんでした。
そんな私が彼女たちのこのお土産を買うとしたらそれはどういうことなのでしょうか?
彼女たちは彼女たちが伝統的な生活を今でも続けているということには価値があります
なのでそれに対してガイドに費用を支払いここまでやってきています。
しかし、このお土産自体には彼女たちの価値は含まれているようには思えません。
ちゃんとしたお土産物屋に行けばもっとちゃんとしたものを買えるでしょうし、ここにいるみんなが同じようなものを作って売っていて、ではその中の誰か一人の商品を買うという選択にも、なぜその人のものを選んだのかという合理性も見いだせませんでした。
このお土産は私にとっては必要のないものなのは確かです。もちろんそれらが私にとって例え必要のないものであっても、私がそれらを買うということにはなんかしらの意味はあると思います。守り継がれているこの民族の生活を継続していくことに一役買うという意味でも。
しかし結局私は何も買うことはしませんでした。
そのお土産コーナーが終わると、彼女たちはヒンバ族に伝わる踊りを披露してくれます。
そう、彼女たちの価値ってあのようなお土産ではなく、こういったところにあるんだよな?と思いつつ鑑賞しましたが、すごく難しいな(というか私自身が難しくしている)と思いました。
帰り道、やはりドイツ人家族の父親に「なぜ何も買わなかったんだい?俺たちは買ったぜ」と言われました。
私は上記に記したような回答はしましたが、私自身もはっきりした答えを見つけられてはいません。
夕方キャンプサイトに戻り、一人だけのキャンプ場を満喫します。
ちょいちょいキャンプ場に顔をだすずんぐりむっくりした愛嬌のある黒人女性が「焚き火したいなら薪をもってくるけどどうする?80ナミビアドル(約640円)だけど」と言ってくれます。
せっかくなのでお願いしました。
彼女はすごく愛嬌がありいつもニコニコ笑っています。
薪をリアカーいっぱいに持って来て「これで今夜一晩足りるー?」と聞いてくれます。
十分です。
そうすると、薪にオイルをかけて火をおこすところまでやってくれました。
電気も無い、焚き火だけの真っ暗闇の中で一人でキャンプ。
新月のこの日は少し離れると空にはこんなにも星があるのかと思うほどの満天の星空です。
天の川をこんなにはっきりと見たのも生まれて初めてです。
焚き火の火を消し、就寝の準備をします。
歯を磨いていると小さなサソリを見つけました。
乾燥地帯でキャンプをしていると、朝、靴の中にサソリが隠れていて、知らずに履いて刺される危険があるという話を聞いたことがあります。
先にサソリを見つけておいたおかげで、次の日の朝は気を付けようと思うのでした。
昨日の教訓で、食料はバイクのパニアケースの中にしまい、テントから離れた場所に置きました。
ファスナーの閉まらないテントの入り口はテープで入り口を補強して就寝しました。
夜中にやはり動物はやってきました。
小さなリスのような動物でしょうか?
テントをカリカリ引っ搔いたり、テントの上に乗ったりしているのがわかります。
うーむ、やはりこのテープで塞いだだけの入り口では心許ないです。
やはり今後キャンプをしていくかどうかは考えないといけませんね…。