ありゃ、テネレさん、なんかおかしくないかい?

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2022年8月28日(日)2回目東京出発24日目、この旅トータル309日目 ナミビア11日目 キートマンズフープ~フィッシュリバーキャニオン~キートマンズフープ 走行距離330km

この日は最初はキートマンズフープから西に300kmほど離れたリューデリッツという街を目指す予定でした。
リューデリッツはナミビアがイギリスの植民地になる以前、ドイツが植民地時代に作ったドイツの街並みを彷彿させる大変綺麗な街だということです。

また、港町のため海鮮料理が有名で、そのほか、数キロ離れた場所に、以前ダイヤモンド鉱山があったけれども採りつくされてしまい、今はゴーストタウンになった町があるということでした。

しかし、正直そこまで魅力は感じていませんでした。ドイツの街並みが見たいならドイツに行けば良いし、海鮮料理なら絶対に日本の方が美味しいのはわかっているからです。

また、リューデリッツに行くとなると、リューデリッツで一泊した後、同じ道を引き返してきてまたここキートマンズフープに一泊という流れになります。

このままリューデリッツには行かずに南下して南アフリカを目指すということでも良いかなと思ったのですが、ふと、ここから160kmほど行った場所にフィッシュリバーキャニオンという大渓谷があることを思い出しました。

ただ、事前情報によるとこのフィッシュリバーキャニオンまでの道が非常に悪いという情報を得ていたので、またそれでテネレさんにダメージを与えて面倒なことになるのも嫌だなと思っていたのです(実際にはテネレさんは大変頑丈で、テネレさん自体がダメージを受けるとうより、後付けしたパニアケースのステーがだいたい折れるパターンですが)。

しかし、荷物をこの宿に置いて空荷で走れば上記のような心配も無いので、リューデリッツには行かずにフィッシュリバーキャニオンに行くことにしました。

キートマンズフープを離れて30kmほど走ると早速ダートになります。
ここから約130kmずっとダートです。

ダートとは言え、そこまで荒れてはおらずどちらかと言えば圧倒的に走りやすい道です。
この感じなら90km/h~100km/hのペースで十分に走れるのですが、厄介なのが強い風と舞う砂埃です。

また、そうやって風によって運ばれた砂が深く堆積している場所もあるため、風に煽られてそういったところに乗り上げると下手をすると転倒する恐れがあります。

100km/hで走っていて、この締まった地面に転倒したら大惨事ではすまないかもしれません。
ヘタクソな私でも何かあっても対処できるように70km/hのペースで走ります。

ダートが始まって約20kmほど行ったところに石橋がありました。
この石橋、川の水が流れ込んで水の中を渡る感じになります。

川の水は表面を流れているだけで深いわけではありません。
石橋の前で一旦減速して、そのまま渡ってしまおうと加速した瞬間、ズルっと後輪が滑ります。

どうやら川の水は常にこの石橋を覆っているようで苔が生えていて非常に滑りやすくなっているようです。
一瞬制御を失ったのですが、滑ったのが後輪だったのが幸い、転倒せずに態勢を整えることができました。

これが滑ったのが前輪でしたら確実に転んでいたでしょう。

ここはゆっくり慎重に。そして、こういう滑りやすい場所ではアクセルも一定に保ち、加速も減速もしないで真っ直ぐに走ることが求められます。

多少緊張はしましたが何とか渡り切りました。
でも、帰りもあそこを通らないとならないといけないのかと思うと多少憂鬱です。

そしてさらなる試練が私を襲います。
実はこの日の朝のキートマンズフープの気温は1℃でした。日中には30℃近くまで上がるため、この日はいつも羽織っている上着を着ないで来てしまいました。

しかし、フィッシュリバーキャニオンに向かう道中は標高がどんどん高くなるため、気温があまり上がってきません。さらに悪いことに常に強風が吹いています。

その強風がどんどん私の体温を奪い、体力を消耗します。

まだ半分の行程も来ていません。更に標高も上がってくることを考えると引き返そうかどうか迷います。
でも、もしかしたらお昼くらいになれば気温も上がってくるかもしれないことを考えると、ここまで来て引き返す決断もなかなかできません。

引き返す勇気。

本当に大変な勇気だと思い知らされます。

でも、最悪の事態を考えても死ぬことは無いと思います。
であれば先に進むことを選びます。

この先の道も激しいアップダウンを繰り返し、酷いコルゲーション(細かい波状の地面)でテネレさんへの振動も酷いものになります。

やっとの思いでフィッシュリバーキャニオンの展望台まで10kmのところまで来ると、小さなキャンプサイトと小屋がありました。

そのまま素通りしようとしたのですが、何やらこっちに向かって言っている人がいます。
どうやらこの小屋で何か手続きをしないといけないようです。

バイクを停めて小屋に入ると、「外国人は200ナミビアドル(約1600円)」と言われます。

私:「あ、お金とるのね」

そう日本語で言うと、受付のおばちゃんは機嫌を悪くして

「ツーハンドレッド!!」ときつい口調で言います。

恐らく多くの人がここで「あ、お金取るんだ」って思って口に出してしまうのでしょうね…。

お金を払ってテネレさんの所に戻ると何かおかしいです…。

あれ…、左の後ろのウィンカーが取れて無くなっている…。
そうなんです。先日もケープクロスにアザラシを見に行く途中、同じところが取れかけていてテープで補強したのでした。

テネレさんは非常に頑丈で強いバイクなのですが、なぜかウィンカーだけは弱くてすぐに折れてしまいます。この旅でもダートを激しく走ると気づかないうちにウィンカーが無くなっているということが何度かありました。

うーむ、近々南アフリカに入ろうというこのタイミングでウィンカーが無くなってしまうとは…。

しかし130km以上もダートを走って来てどこで落ちたかなんてわかりません。仕方ないので諦めます。

このままフィッシュリバーキャニオンを目指します。

このフィッシュリバーキャニオン、絶景という言葉がぴったりの場所です。
日本なら柵で囲って安全を確保するでしょうが、ここには何の柵もなく大渓谷を見渡せます。

以前こんな話を聞いたことがあります。

「日本では危ないから柵を作る。でも海外では柵が老朽化した方がよほど危ないし、そもそもそこが危ないかどうかなんて見ればわかるから柵なんて作らない」と。

地球の大きさを感じます。
そして誰もいません。今ここで私がテネレさんごとダイブしたら、誰も私がここでいなくなったなんて気づくことなく地球が滅びるまで私は永遠にこの渓谷の下で眠ることになるでしょう。

とりあえず私はここでダイブする勇気はないので、とりあえずオシッコだけでもします。でも、あまり崖に近づくのも怖いチキンな私は、結局この渓谷のハシッコでオシッコしただけでした。

私がちょうど帰るときにKTM1200Adventure に乗った二人組がやってきました。南アフリカからのライダーとのことです。
なぜかそのうちの一人は私にしきりに「今日はどこに泊まるんだ?」と聞いてきます。

私は荷物がキートマンズフープの宿に置きっぱなしなので「今日はキートマンズフープに泊まるよ」と言うのですが、なぜか何度も聞いてきます。

その真意はわからずじまいで最後に「お前のバイクはどこにも問題無いか?」と聞かれ「(ウィンカー問題はあるにしろ)大丈夫だ。」と答えると、「そうか。じゃあな」と言って立ち去って行きました。

帰り道では風もだいぶおさまり大変走りやすくなっています。

風が無いなら大丈夫だと思い100km/hくらいのペースで走って帰れます。
そうなれば130kmの距離なんてあっという間です。

無事宿に到着し、ナミビアも十分に楽しんだし、リューデリッツには行かずにこのまま南アフリカを目指すことに決め、この日は就寝しました。

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