あー、こんな雄大な景色は当たり前じゃないんだ

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2022年8月29日(月)2回目東京出発25日目、この旅トータル310日目 ナミビア12日目 キートマンズフープ~ノードエバー 走行距離320km

素晴らしかったナミビアもこの日が最後となります。
ナミビアは居心地が大変良かったし、正直一日くらいここでダラダラしても良いかななんて思わなくも無いのですが、無駄な滞在をすればお金だけでなく人生の貴重な一日を消費します。

旅が長くなってくるとゆっくりしたいという気持ちが湧いてきて、居心地のいい場所に沈没したくなる気持ちはわからなくありません。
しかし、私は日本に帰ってやりたいことも、そのために待たせている人もいます。
毎日9時頃に就寝するという大変健康的な毎日を過ごしているのですからこの日も朝はきちんと目覚めます。

目覚めると言っても、ここキートマンズフープの朝方の気温は0℃近くまで下がります。宿の中とは言え寝るときは必ず耐寒温度-20℃までの寝袋に入って寝ています。日が昇る7時くらいまではなかなか寝袋から出ることができません。

それでも宿の朝食は7時半にお願いしているので7時には頑張って寝袋から出て先にできる限りのパッキングだけはしておきます。

7時半に朝食に行くと、昨日は私一人だった食堂が満席です。
私が隅の席に座ってコーヒーを飲んでいると、斜め前のテーブルのご年配の男性が両手をバイクに乗る形にして親指を立てウィンクをしてきます。
海外の方って本当にバイクが好きだよなーって思います。日本ではあまりバイクに乗ることを良いこと考えないご年配の方は多いように感じるのですが、海外だとバイクに乗っているだけで手を振ってくれたり声を掛けてくれる人が非常に多いです。

朝食を済ませ、バイクに荷物を載せた段階で、昨日無くした後方左側のウィンカーをどうしたものか考えてため息が出ます。

恐らくは大丈夫だとは思うのですが、南アフリカ入国時には荷物の検査をかなり細かくされるという話も聞いています。その際にバイクの整備不良を指摘されたら面倒です。

近くに大きめのスーパーがあるのでそこで豆電球でも売っていれば国境の直前でそれを取り付けてやり過ごすこともできるだろうと思い探してみますが、見つかったのは少し大きめのLEDランプ。ギリギリ付けられなくも無いか?と思い、250円程度だしと思って購入することにしました。

うーむ、でもこれで南アフリカもずっと走るのも微妙だよなーと思い、実は事前に調べて知っていた、この街にある自動車修理工場に行ってみることにしました。

修理工場に行ってみると、スクラップの車だらけの産廃場なのか工場なのかわからないような場所でしたが、ジブリ映画に出てきそうな如何にもメカニックですと言わんばかりの髭を蓄えた白人の男性が声を掛けてきます。

メカニック:「よう。なんか用かい?」

私:「バイクのこのウィンカーが無くなってしまいまして。中身の豆電球だけでもあれば手に入れたいのですが…?」

すると奥からもう一人体の大きなこの工場の責任者らしき人が出てきて、メカニックが説明します。

メカニックはちょっと待ってな?と言って、奥からジャンク品と思われるバイクのだいぶイケてないウィンカーを持ってきました。
私からすれば見た目などどうでも良いので、とりあえずウィンカーが付いていて周りに文句を言われなければそれで良いです。

ウィンカーなんて配線を繋げればそれで動くのですぐに問題なく付きます。

メカニックが電話でボスに確認し料金を私に言います・

メカニック:「600ナミビアドル(約4,800円)だ」

あり得ないくらいのぼったくりです。こんなジャンク品付けて、素人でも5分で終わるような作業で5,000円近く請求するなんてお前の腕はどんだけのもんなんだよ!と言いたくなります。

しかし、工賃に関しては相場なんてあってないようなものなので文句を言っても仕方ありません。
今日がナミビア最終日でナミビアドルも多少多めに残っているので言われた金額を払います。ただ、コノヤロウ、今のインターネット時代、この工場の悪口をボロクソ書いてやろうかとも思うのですが、恐らく地域の人だけを相手にしているこの小さな工場にとってそんなことは痛くも痒くもないでしょう。

商売でやっているのですからきちんと請求するのは当然ですし大切なことだと思うのですが、こういうあからさまなぼったくりはやはり良い気がしません。

私は今までこの旅でたくさんの人に助けてもらいました。

「旅人からは金は取らない」と言って、西モンゴルでやっと旅人らしい顔つきにになった私のテネレさんや洋介さんのモンキー、アシムのGSXのメンテナンスをしてくれたロシア バルナウルのアンドレ。

「君は俺たちの夢なんだ!だから無事に旅を続けて欲しい」そう言ってパミールで更に男前になったテネレさんをメンテナンスしてくれたカザフスタン アティラウのライダースクラブの面々。

「ライダーはみんな俺たちの仲間さ」と言って優しく笑い、2年半放置されたテネレさんを新品かと思うほどに蘇らせてくれたアンゴラのライダースクラブのルイさん。

彼らは一様にお金は一切受け取ることなく、精一杯私のサポートをしてくれました。
こういうちょっと不快なことがあると余計彼らとの思い出を優しく輝かせてくれます。

この日はここキートマンズフープから300kmほど南に下った国境の町、ノードエバーを目指します。

とにかくナミビアはひたすらに大きいです。山も空も大地もなにもかもが大きいです。
ロシアもモンゴルもパミールもジョージアもヨーロッパもみんな大きかったですけど、それは大陸だからですね。
ずっとそんな景色を見ていてそれが当たり前になってしまっていますが、こんな大きな景色を見るのは大陸を走っているからです。日本に帰ればこんな大きな景色を見る機会はなかなかないのですから、今この瞬間を大切にしようと思うのです。

たった300kmちょっとの距離ですので昼過ぎには国境の町ノードエバーに到着します。

たった10日間ほどのナミビアでしたが、町中を闊歩するヒンバ族に会ったり、慎ましく暮らすヒンバ族の村に行ったり、お父さんだけ元気で奥さんと息子さんはテンションの低いドイツ人家族に出会ったり、砂嵐に遭ったり、生まれて最もはっきりと天の川がくっきりと見える夜空を見上げたり、フラミンゴを見に行ったり、くせーくせーアザラシの海岸に行ったり、でっかいキャニオンに行ったり、ウィンドフットの宿では素敵なカップルのシルバインさんとジャスミンさんに会ったり、霧の立ち込める寒いスワコプムンドの街では元気いっぱいのイタリア人カップルに出会ったり、たくさんの思い出ができました。

人生のうちのほんの一瞬の時間でしかないけれど、その一瞬を大切に生きようと思わせてくれる国、それがナミビアでした。

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