2月21日(金)東京出発257日目、ベナン9日目、ガボン1日目 コトヌー~リーブルビル 飛行機
朝10時半
スラデュさんが車で宿まで迎えに来てくれます。
本来ならばこのまま空港に向かいたいところなのですが、ガボン側でバイクを受け取るには別の書類が必要ということで一旦港に向かいます。
港に着くとスラデュさんがウンゲ氏の事務所まで行って書類を受け取って来てくれました。
私も確認しておかないとと思っていたのですがここまで聞きそびれていたガボン側での手続きの方法について、こちらが尋ねる前にスラデュさんから説明してくれました。
スラドゥさん:「こちらがコトヌー側の連絡先です。何かあればこちらに電話してください。そしてこちらがガボン側の連絡先です。船は早ければ日曜日にガボンに到着します。日曜日になったらこちらに電話をして実際には、いつ船が到着するか確認してください。担当者の名前はサムです。その後の手続きの方法もそこで説明してくれると思います」
スラドゥさんは早ければ日曜日に船は到着するけれども、恐らく月曜日になるのではないかということでした。
書類を受け取るとそのまま空港まで送ってくれました。
ちょうど一週間前、何のつながりも無いままにいきなりスラドゥさんに電話をして助けてほしいとお願いしました。
一切嫌な素振りを見せることなく快く引き受けてくれ、予想よりもずっと早く船を見つけることができました。
お別れの時
私:「本当にありがとうございました。あなたの優しさは絶対に忘れません」
スラドゥさん:「私の方こそ、あなたの優しさを忘れることはありませんよ」
嘘ですよ…。私はスラドゥさんに優しくなんてできていなかったです。それどころか私はスラドゥさんのことを一時は疑い、厳しい言葉を投げかけることもありました。
それでもスラドゥさんは最初から最後まで全力で我々のために一生懸命動いてくれました。
絶対にあなたの優しさを忘れません…。
スラドゥさん
あなたはどこまでもどこまでも誠実で優しい人でした
飛行機を待っているとき、ガボンでの滞在宿を予約することにしました。
ずっと体調不良のリョウさんのことを考えても少し環境の良いところに泊るべきと考えたのと、少しでもマラリアのリスクを避けるためです。ガボンは現在雨季であり今まで以上にマラリアのリスクが高いと考えられます。ガボンも首都のリーブルビルを離れてしまうと環境は一気に悪くなることが予想されることから、ここで少しでも鋭気を養いたいところです。
無事、宿の予約を終えると宿から空港から宿までの有料シャトルを利用するかとの連絡がきました。
すでに我々は飛行機に乗り込んでしまっている段階でしたが、慌ててお願いすることにしました。空港でタクシーを拾ってぼったくられるよりも、初めから料金のわかっているシャトルを使った方が良いと判断したからです。
結局飛行機は1時間遅れで離陸しました。
途中、機内食が出ました。
リョウさんは一旦は受け取ったのですが、一回蓋を開けるとすぐに閉めてしまいそのまま眠ってしまいました。朝食も食べていませんでしたし、お昼も空港で買ったちょっとしたお菓子を口にした程度でした。
後で聞いたところですと、飛行機で乗り物酔いをしてしまったそうです。やはりあまり体調は良くないのでしょう。
約2時間のフライトはあっという間でした。
空港に降り立ち、まずはヘルスコントロールで体温を計り、無事に通過します。
次のパスポートコントロールで止められてしまいます。我々はコトヌーできちんとガボンビザも取得してきているので問題ないはずです。しかしこの警察官は英語が全く話せないため我々も理由がわかりません。
しばらくすると英語を話せる担当官を呼んできてくれました。
担当官:「飛行機のチケットを見せろ」
そう言われて航空券を見せるのですが
担当官:「違う!それのことじゃない!」
私:「帰りの航空券を言っているのですか?」
担当官:「当たり前だろ!!」
私:「持っていません。私たちはバイクをコトヌーからリーブルビルまで船で送っています。それを受け取り次第、バイクで出国します」
担当官:「なんだと?!お前たちの入国の目的は何だ?!」
私:「旅行です」
担当官:「嘘をつくな!ビジネスしに来たんだろ!」
資源のある国ではありがちなことです。彼らからしたら外国人は自国の資源を奪い取ろうとする悪の存在なのです。ここガボンは人口160万人程度にもかかわらず豊富な資源があり、周辺国に比べてかなり豊かな国なのです。しかし特段観光資源があるわけでもないので疑われても無理はないのかもしれません。
私は必死に説明します。
私:「嘘ではありません。私たちは日本からバイクで旅をしてきたのです。その証拠もあります」
そう言ってカルネなどを見せるのですが、
担当官:「じゃ、お前のそのバイクってのはどこにあるんだ?!」
私:「今は船でコトヌーからリーブルビルに運んでいる最中ですので海上の船の上です。バイクの受取証も持っています」
そういってバイクの受け取り証を見せると、そこに書いてある電話番号を見つけて
担当官:「これがその船会社の電話番号か?このサムってのが担当者か?」
と聞いてきてそのまま電話をしました。電話はフランス語で行われていたので私には何を話しているかはわからなかったのですが、サムさんの方できちんと対応してくれているような雰囲気ではありました。
しかしそれでもこの警察官たちの態度は頑なです。どうしたものだろうかと思っていたのですが、自分でバイクで陸路で旅をすると言っていて気づきました。
私:「私たちはこのまま陸路でコンゴに行くんです。すでにコンゴビザも持っています」
そう言ってパスポートを見せました。ガボンビザとコンゴビザの取得日も同一日であり、これを見せると警察官たちの態度が柔和になったのが感じ取れました。
担当官:「ガボンに知り合いはいるのか?」
私:「いえ、いません」
担当官:「どこのホテルに泊まるんだ?」
そう言われて予約確認のメールを担当官に見せます。
担当官:「このホテルからの迎えは空港に来るのか?」
私:「はい。宿までのシャトルのお願いをしています」
そう言うと今度はホテルに電話をして確認します。すると
担当官:「今電話をしたら、ちゃんと迎えに来てくれるそうだ」
と言って最初に比べてだいぶやわらかい空気になってきました。
そこにここにいる警察官たちの上司と思われる、小柄だけれども大変ふてぶてしい男がやってきました。
何を揉めているんだというようなことを言い、我々の状況を他の警察官が説明すると「そんな奴らを入国させるわけにはいかないだろ!」という風に我々を睨みつけて何かを言っています(フランス語で話しているので私には実際には何を言っているのかわかりません出したが)。
しかし、ここにいた警察官たちが「こいつらは大丈夫ですよ」というようなことを言ってくれているようで、このふてぶてしい上官らしき男を説得してくれました。
そして遂にこの担当官が入国手続きをしてくれることになりました。
リョウさん:「何が問題だったのか全くわからなかったのですけど」
と言うので、我々がガボンにビジネスをしに来たのではないかと疑われていたことをなどを説明すると
リョウさん:「そういうことだったんですね。確かに飛行機で来てバイクで出ていくって怪しく思われるかもしれませんね」
と納得していました。
こうやって問題が発生した時には私も余裕がなくなるのでついついリョウさんに通訳することなく話を進めてしまうので、確かに不安になってしまいますよね。かといってリョウさんに通訳しながら担当官に説明をするのも大変なので、どうしてもその場を切り抜けることを第一優先にしなければならないのですが。
やっとの思いでこの担当官が入国のスタンプをパスポートに押してくれました。
私が「ありがとうございます」とお礼を言うと、初めてこのときこの担当官が笑顔を見せてくれるのでした。
さて、だいぶ遅くなってしまいました。
預け荷物を受け取りに行くと我々のところにやってきて勝手に荷物をカートに載せて運ぼうとする奴がいます。このアグレッシブさは後でお金を要求してくるパターンです。
英語で「お金は払わないよ」と言っても通じているのか通じていないのか無反応です。
空港を出るとそこには私の名前の札を持った男が立っていました。ホテルにお願いしたシャトルのドライバーでしょう。
我々はガボンの通貨を持っていなかったのでATMで引き出したいと言うとこのドライバーはあからさまに嫌な顔をします。
本来なら残っていた通過の両替やsimカード(後日船会社に電話をするために必須)の購入をここでしたかったのですが、こうあからさまに嫌な顔をされて急かされるものですから、仕方なく現金の引き出しのみ行うことにしました。
空港のATMは言語を英語を選択して操作しようとするとエラーになるようです。最初英語で操作したところうまく動作せず、仕方なく一回キャンセルしました。すると何故か勝手に20,000XAF(約4,000円)出てきました。
何か操作をしたわけでは無いので、これは私のものでは無いと思い、両手を広げてどういうこと?とジェスチャーすると、カートで荷物を運んでくれたあの男がサッとその20,000XAFを奪い取りました。
しかし、後で確認したところこれは私の口座から引き出されたものであることがわかりました。
その後リョウさんもお金を引き出したのですが、あのカート男に引き出したお金から10,000XAF(約2,000円)を抜き取られて残りを渡されたそうです。
私はあの男がカードにも現金にも触れないように体で奴をブロックしながら操作していたのでそのあとに引き出したからお金を抜き取られることはありませんでしたが、リョウさんにやったことって泥棒ですよね。
私もあいつが取った20,000XAFは私の物だったことを後から知り腹立たしくも思ったのですが、あのときは自分のものとは思わなかったので、他人のお金を自分の財布に入れるような卑しいマネをするよりもまだましだったと怒りを鎮めるのでした。
ホテルまでのシャトルの運転があまりにも荒っぽく、途中事故を起こしそうなこともあったので、私はこのドライバーに対して大変不愉快な思いをしました。
我々が空港で警察に疑われていて遅くなってしまったのでイライラしていたのかもしれませんがあまりにも態度も運転マナーも悪かったのです。
この日は飛行機での移動だったため陸路よりも手続きは簡単だろうと思っていたのですが、なかなかうまく行きませんね。
とりあえずは船が到着するまではゆっくりできるので、それまでに鋭気を養うこととします。
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